「お見合いはご遠慮します」2巻の番外編SS掲載

2016年 04月21日 (木) 15:25

作品を読んで下さってありがとうございます。
予告しておりました、書籍2巻の番外編、その後のSSを掲載いたします。
少しでも楽しんでいただければ幸いです。



※※ 番外編のその後で ※※

 サリカは迷っていた。
 この相談をするなら、母ではダメだ。むしろ祖母だろう。
 なにせ母自身も変人だから相談に適さない。
 常識があるのに変人と結婚したのは祖母の方なので、ある意味経験が豊富だろう。

「でも待ってわたし。ラーシュも婚約のお披露目直後で、ちょっとだけ錯乱してたのかもしれない」

 サリカはそう思おうとした。
 だって、自分の将来の夫が変態っぽいけどどうしよう、なんて相談はし難い。
 なにせ祖母達も、ラーシュはとてもマトモそうな人だからと喜んでくれていたのだ。
 そんなわけでサリカはしばらく様子見することにした。

 婚約式の翌日。
 朝食の席で再会……と思ったら「しばらく休みなんだろう?」とサリカの祖父と父に絡まれたラーシュは、夜中過ぎまで深酒につき合わされたせいで起きて来なかった。

「まったくもう、ハディクったら。ごめんなさいねサリカ。ラーシュさんに謝っておいてくれるかしら?」

 祖母は「迷惑をかけちゃったわ」とため息をついた。

「う、ううん。ラーシュは気にしないと思うよ」

 ラーシュだって騎士仲間と深酒をすることぐらいはある。事件真っ最中の頃はサリカの件でそれも控えていたけれど、婚約すると決まって以来、非常にだるそうな表情のブライエルに連れ去られたり、他の騎士達に掴まって連行されているのを見かけたことがある。
 ティエリが「朝帰りしてきたわよー」とわざわざ報告してくれたこともあるのだ。
 サリカは男の人ってそういうものなんだろうと思っていた。

 結局ラーシュと再会できたのは昼を過ぎてからだ。
 お湯を浴びたらしくてお酒臭いということはなかったけれど、なんだか目が淀んで、暗い顔をしていた。

「な……何かショックなことでも言われた? まさかお父さんたちにいじめられたとか」

 話につき合わせた祖父や父のせいかと思ったら、ラーシュは「いや」とそれは否定した。

「少し、衝撃的な話を聞いてだな……」
「どんな話?」
「将来的に、相手が諦めなさそうな嫌な予感がする話だ」

 そう言うと、ラーシュはぶつぶつと「なんだよ、執着が強すぎる家系なんじゃないのか?」とか「まさか陛下が……」とつぶやいていた。
 一体何の話かわからないが、とにかく今日のラーシュは大人しくしていそうだ。
 けれど、二日酔い覚ましにゆっくりと今後の話をしようとしたのだが、

「ねぇ。具合悪いんじゃないの?」

 ラーシュは長椅子のサリカの横に腰かけると、ごく当たり前のようにサリカの肩を引き寄せて抱きしめてこようとする。

「ラーシュ、あの、一応ほら、他の人がいつ入ってくるのかわからない家だから」
「お前の父と祖父と母親が、口をそろえて『気にするな』と言っていた」

 ラーシュの胸を手で押しながら抵抗するサリカに、ラーシュが楽し気に答えた。

「まったくあの三人はっ!」

 やっぱりお祖母ちゃんしか常識人がいないわこの家! と思いながら、サリカは肩を掴んだラーシュの手をつねる。

「どう言おうとだめ。ここ、庭と繋がってる部屋だもの。昨日の片づけをしてる使用人さん達にでも見られたら……」

 そこで、サリカは言葉を止めた。
 ラーシュがつねられた自分の手をじっと見ていたのだ。
 嫌な予感がしながらも、もしかしたら強くつねりすぎたのかもしれないと、サリカは尋ねてみた。

「痛すぎた?」

 すると、とんでもない答えが返ってきた。

「なんかこんな風につねられるのが、けっこう幸せかもしれないなって……」
「ぎゃああああっ! お祖母ちゃーん!!」

 サリカは急いで祖母の所へ駆け込んだ。
 昨日の疲れを癒すためにもと、ゆっくりしようとしていたサリカの祖母は、突然やってきた孫娘の様子にぎょっとしている。

「どうしたの、サリカ」
「あのっ、お祖母ちゃん。うちってまさか、変態男を引きつける家系なの!?」
「はぁっ!?」

 祖母が思わず叫んだ。
 目を丸くする祖母を見るのは久しぶりだが、今はそれどころではない。
 サリカは一体どうしてそんなことを考えてしまったのか、祖母しかその場にいないのを良いことに切々と訴えた。
 けれど聞いていた祖母の方は、最初は不安そうだったのに、だんだんとニヤけた表情になっていく。

「痛いのがいいってどういうこと!? やっぱりラーシュもお父さん系の変態になっちゃうのかな?」
「あらあらまぁまぁ」

 祖母はくすくすと笑って、なだめるようにサリカの頭を撫でた。

「それはラーシュさんに教えてもらいなさいな」
「えっ、だってラーシュが『痛い方が好きなんだ』とか言い出したら、わたし立ち直れない……」
「そんなことはないから、ね? あとラーシュさん以外に聞いちゃだめよ? 特にお前の母親は絶対だめ。からかわれて酷い目に遭うわよ?」
「う……うん、わかった」

 そう言われたサリカは、お祖母ちゃんがこんなことで嘘をつく人じゃないし……と思い、渋々ラーシュの元へ戻ることにした。


 一方その頃、ラーシュの元にはこそこそとサリカの祖父、ハディクが顔を出していた。

「今サリカが叫びながら飛び出して行ったけど、まさか、あの話をしたとか……いうわけじゃないよね?」
「あの話ですか? 無理ですよ。知らないで済むなら墓まで持っていきますよ。……意識されたらどうするんですか。あんなに病的に可愛がっているってのに」
「だよねぇ。子供って怖いなって、僕もあの時しみじみ思ったよ。まさか当時12歳の陛下がうちの嫁のことを好きになって、延々と想い続けていたとかさ……」

 サリカの祖父はため息をつく。
 そのせいでエルデリック王子は、母である王妃に嫌われたのだ。二度と同じことが起こらないようにと思っていたサリカの祖父だったが、時すでに遅しだった。

「エルデリック殿下は、懐いているだけだと思ったんだよ。一桁の年齢で出会っていたなら、さすがにお姉さんかお母さん代わりだと考えてるかと……」
「きっとバルタ王家は、年上好みなんですよ。そうとしか思えません。二代にわたってとか、恐ろしい……。陛下が独身を貫いたところからして、エルデリック殿下も40歳や50歳になっても諦めないってことじゃないですか」

「うちの嫁が子供を産んでも、全く堪えた様子がなかったからね……。やはり国のためにも、頑張ってくれ婿よ! なんとか諦めさせて、エルデリック殿下にはまっとうな道を歩んでもらわないと!」
「俺もぜひそうしたいですよ、お義祖父様。でも、やたら悪知恵の回るお子様に、これ以上どうしたらいいのやら」

「相談なら私が乗るからな!」
「頼りにしています」


 そうして男二人が固く握手をしたところで、サリカは戻ってきてしまった。

「変態同士が、いつの間にか手を結んでる……」

 前後の流れがわからないサリカが、思わずそうつぶやいたのも無理はないことだった。

コメント

冬弥 さん

感想ありがとうございます!
一巻分も読んでいただけたとのこと、楽しんでくださったようでこちらも嬉しいです♪
コメントありがとうございます♪
奏多  [ 2016/06/02 22:48 ]
初めまして。

1巻分も読みました、ニヤニヤしました。
ありがとうございます。
冬弥  [ 2016/06/01 10:37 ]
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