「私は敵になりません!」3巻書籍購入御礼SS 1

2016年 05月27日 (金) 19:00

いつも読んで下さってありがとうございます!
本日「私は敵になりません!」3巻目の発売日となりました。
予告しておりました、書籍番外編のその後話のSSを掲載いたします。
番外編を読んでいない方には、ちょっとわかりにくいかもしれません。
少しでも楽しんでいただければ幸いです。
また、頑張れたら一週間後くらいにもう一作SSをアップできたらいいなと、想います。
宜しくお願いします!


◇『その後のソーウェン』

 その日からじわじわと、ソーウェンでは不可思議な光景が散見されるようになった。
 
 女性を呼び止めた知り合いらしき男が、にこやかに応じた女性の首元を見て、ぎょっとする。
 買い物にやってきた女性の差し出した籠に野菜を入れようとした店主が、籠に結び付けられたものを見て目を見開く。
 そうしてソーウェンの領主館周辺に住む男性達が気づいてみれば、女性達のほとんどが、いつのまにか小さな石の人形を持っていたのだ。

「あれは、なんかのまじないなのか?」

 町の人や兵士達が集まって話していると、通りがかったソーウェンの騎士がこう説明したらしい。

「……どうも王子殿下の魔術師様が、女性達を保護するために作ったものだと聞いたぞ」
「女性の保護? どうやって?」
「なんでも、あの人形でまず相手を怯えさせ、それでも被害があるようだと呪いがかけられるとか……」

「呪い!?」
「魔術師ってそんなこともできるのか?」
「いや、あり得る。なにせ魔術師になるためには、生贄が必要なんだろ?」

 一人がそう言い出すと、自分もそう聞いた、俺も聞いたと同意する者が続出する。

「十人の生贄を火にくべて儀式をすると、火の魔術師になれるとか」
「じゃあ、あの魔術師様も十人を土の中に埋めて……!?」
「あんな娘っ子が!?」

 そうして生贄について話し合った後、彼らは同じ結論に到達した。
 やっぱり魔術師が作ったものだから、何が起こるか分からない、と。


「……という話が広まってるらしいぞ」

 伝聞でそれを知ったアランは、レジーにそう報告してきた。
 レジーは思わず笑ってしまう。あの人形を作っている時点で、そこそこ騒ぎにはなるだろうと思っていたが、こういう方向になるとは。
 でも彼女達の思惑通りになったともいえるし、効果としては噂との相乗効果でさらに上がったことだろう。
 だからアランに言った。

「いいんじゃないかな? うちの兵士達がやんちゃをしない抑止力にもなってるみたいだしね」
「役に立ってるのは認めるがな」

 とアランも同意はする。
 なにせ兵士達は、戦場でキアラの魔術の威力を目にしている分、彼女に畏怖している。だからキアラの持ち歩いている彼と似たものを見ると、妙なことをしたら魔術師にすぐ知られてしまうのでないかと警戒するのだ。
 それを耳にしたソーウェンの騎士や兵士が、町の人々に伝聞を披露して、さらに曲解を呼んだのだろう。

 どんなに規律通りの行動を求めても、逗留地で兵士が問題を起こさないことなど無い。万の数がいればなおさらだ。
 それでも過去の戦場などよりずっとファルジアの兵士の行儀がいいのは、キアラがいるからだろうとレジーは思っている。
 ある時は恐怖の対象として。ある時は、年若い娘までが戦っているのだからと奮起する材料にもなる。故郷に子供がいる者なら、家族を思い出すきっかけにもなるだろう。
 だがアランは少々不満なようだ。

「領主館の召使まで持ってるんだぞ? いつでもどこでも、あの人形が目を光らせてるみたいで落ち着かなくないか?」
「私はそうでもないよ。見慣れてるものがあるだけ、だと思うけど」
「見慣れてても落ち着かないだろ。しかも見本になったのが、動く人形だぞ?」
「彼は動くのが普通だと思ってるし、キアラを見てるうちにあの動きも微笑ましく感じるようになったから、特には」

 そう返すと、アランはちょっと呆れたような表情になった。

「……どうかしたかい?」
「いや、かなり無自覚に重傷だなって」

 重傷。と言われてレジーにもようやくアランの言いたいことがわかった。
 だからにっこり微笑んでみせた。

「そうだね、キアラが持っていれば、たとえヘビでも蜘蛛でもそのうち可愛く見えてくるんじゃないかなと思うよ」

 アランはやや身を引いた。

「お前ほんと病気だな……」
「ありがとう?」
「そこは礼を言うとこじゃない……」

 そう言って額を押さえるのを見て、レジーは思わず笑ってしまった。

コメント

佐谷 詞子 さん

コメントありがとうございます!
あの人形は……アレです(笑)
レジーに胸キュンしてくださって嬉しいです!
ありがとうございます♪
奏多  [ 2016/05/28 11:48 ]
あの人形って……( *´艸`)
私もひとつほしいデス。
何よりも最近の素直なレジーに胸キュンです。
花詠 詞子  [ 2016/05/27 23:49 ]
コメントの書き込みはログインが必要です。