「私は敵になりません!」4巻書籍購入御礼SS

2016年 10月27日 (木) 23:38

いつも読んで下さってありがとうございます!
明日「私は敵になりません!」4巻目の発売日となりますが、既に発売している所もあるということで、書籍番外編関連のその後話のSSを掲載いたします。
番外編を読んでいない方には、ちょっとわかりにくいかもしれません。
少しでも楽しんでいただければ幸いです。
宜しくお願いします!

◇◇◇

 夜、唐突に一人で歩くと言って出て行ったグロウルの主は、戻って来た時にため息をついた。
 誰を見かけての行動かもわかっていたし、デルフィオン男爵城の中では滅多なことはないからと、一人で行かせたのだが。

「上手くいかなかったのですか?」
「いや、ようやく捕まえたよ」

 ただね、とレジナルドは続けた。

「正直、あんなに避けられるとは思わなかったんだ」
「……何をなさったんですか?」

 先日からどうも様子がおかしいとグロウルも思ってはいた。平然としてはいるものの、長年側にいたのだから、いつになくレジナルドが動揺したのはわかっていたのだ。
 けれど理由を聞く機会がなかったので尋ねてみたわけだが。その時はただ、キアラ殿に避けられるのだから、何か歯が浮くようなことでも言っただけだと思っていた。

「キアラがちょっと段差があるところから転がり落ちそうになって、受け止めきれなくて私まで転がってしまったんだけど」
「お怪我は?」
「何もないよ。ただね、キアラがその時唇がぶつかったことを気に病んだみたいで」
「……そ、それだけですか?」
「うん? もちろんそれだけだよ」
「…………」

 グロウルは嘘だろう、という言葉を飲み込んだ。
 あの、レジナルド王子が! さんざんキアラに過剰接触を続けていたあの王子が!

(ぶつかっただけで何もしなかっただと……!?)

 ありえない、と思った。そんな状況が出来たのなら、ここぞとばかりにそれ以上のことをしそうだと思っていたのに。
 グロウルの評価などまだ甘い方だ。フェリックスなどは「私達の方で、あの二人をどこかに閉じ込めた方が早いような気がします」と言い出す有様だ。
 もちろんグロウルは止めた。お膳立てなどされたら、レジナルドの方も「それなら」と突っ走ることを恐れたからだ。

 ただ、ぶつかっただけで済ませたのが意外だった。
 とすると、キアラは恥ずかしさのあまりに、レジナルドと顔を合わせられなくて逃げ回っているのだろうとグロウルにも理解できる。

「追いかけるなど、珍しいですね?」

 いつもなら、そこまでしないと思ったのだ。レジナルドもうなずく。

「そっとしておくという選択肢もあったんだけれどね、それじゃキアラが普通に話してくれるようになるまで時間がかかりすぎるし、キアラが変な方向に考えが突っ走ってしまったら困るから。積極的に慣れてもらいたいと思っているんだ」
「……だから、本日は急に方向転換してばかりいたんですか?」
「うん、キアラが歩いて来るのが見えたら、そうしていたよ?」

 物静かそうな顔をしているのに、あいかわらずやたら行動的な人だなとグロウルは思う。
 レジナルドは攻められるとわかれば、黙って待つということはない。彼が動かないのは攻めるのが難しいか、攻めると不利になる時だけだ。

「それで、目的は達成されたのですか?」

 尋ねると、レジナルドは楽し気に微笑んだ。

「もう大丈夫。顔を見ただけで逃げることは、無くなったと思うよ」
「それはようございました」

 グロウルはほっとする。
 どうやったのかはさておき、恥ずかしがるキアラを宥めたのだろう。これからデルフィオンよりも厳しい状況の、敵の占領地へ行くことになるというのに、主戦力と言っていい人物が元帥のレジナルドに、ささやかなものでも上手く話ができないという状況は望ましくないのだから。

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