2016年12月24日 (土) 23:58
メリークリスマス。
今年もサンタの時期がやってまいりました。
皆様はサンタを信じているでしょうか。
もちろん私も信じています。
今年もサンタがやってくるのを心待ちにしています。
私は今日という日に供え、私は毎日の激しい筋トレと有酸素運動、週に一度のチートデイによって、理想の肉体を手に入れました。
サンタもルドルフをトレーナーに今年もストイックなトレーニングを積み重ねてきたのでしょうし、トーナメントに出場する選手は誰もが強敵です。
しかし私も自信があります。
サンタは私にチャンピオンベルトをプレゼントしてくれるでしょう。
というのはさておき。
今年は書籍の方をたくさん出させていただき、かなり忙しい年になりました。
来年はドラマCDも出るということで、今も大忙しです。
でも今日ぐらいは休んでも大丈夫そうなので、この一年を振り返ろうかとも思います。
めんどくせ、って人はこちらをどうぞ。
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無職転生(とジョブレスオブリージュ)のクリスマス短編です。
では振り返ります。
今年は人造人間になることもなく、普通の一年でしたね。
1月
いつも通り小説を書いていると、友人のAが旅行にいかないかと誘ってきた。
山荘を借りつつ、雪山を楽しもうという企画だ。
BとCも一緒に、四人でだ。
鬱屈していた私はその誘いに一も二もなく飛びついた。
出発は2月末日。今から楽しみだ。
2月
2月の終わり、私とABCの四人はBの車で山荘へと向かった。
目的の山までは車で三日もかかったが、道中は楽しかった。
高速道路のパーキングエリアで変な土産を買ってみたり、雪山での遭難事故について話して怖がりやのCを脅かしてみたり。
大の大人四人とは思えないほど、キャッキャとはしゃいでいた。
おかしいと感じたのは、車から降りて、吊橋を渡っている時だった。
長年人が使っていないと思えるような吊橋で、本当にこの道であっているのかと、Aに何度も質問した。
Aは問題ないと言ったが、その直後に猛吹雪が吹き荒れ、我々は遭難した。
3月
なんとか小さな山小屋を発見し、避難できた。
何日も泊りがけで旅行をするつもりだったので、駄菓子や酒のつまみなど、保存の効く食料があったのも幸いした。
だが、寒さだけはいかんともし難かった。
火は愚か、ロクな防寒具も無い状態。眠ったら死ぬという知識だけはあった我々は、ただひたすら眠らないようにと努力をしていたが、吹雪と寒さで体力を奪われ、次第にうとうととしてきてしまっていた。
そんな中、Aが提案した。
山小屋の四隅に一人ずつ立って歩き、別の角にいる者の肩を叩いて回るのだ、と。
そう、あの有名な奴だ。
きっと、Aの意識も朦朧としていたのだろう。
私たちは互いの意識を保つため、互いの肩を叩きまわった。一人足りないはずなのに、誰もそれを気にもとめなかった。
そして翌朝、私が二人に増えていることが判明した。
4月
我々はサバイバル生活を始めていた。
私が増えた件については、無論色々と話し合った。
どっちが偽物だ、なんて話も出たが、どうやらどちらも私であるようだった。私しか知らない秘密を、お互いに知り得ていたからだ。
友人たちは私達の中の違いを探そうとし、ある時にCが私たちのしている腕時計の時間が、五分ほどズレている事を発見した。
Bはそれを見て、ほら見たことか、自分たちの時計の時間と違う方が偽物だ! と叫びABCそれぞれの時計を確認し……凍りついていた。全員の時計の針が、ぴったり五分ずつずれていたからだ。
彼らはそれを確認し、それ以上、増えた私たちについて言及するのをやめた。
常日頃から自分が二人いたら……そう考えていた私達にとって、増えるというのは悪いことではなかった。
ともあれ、私達が遭難したと気づけば、誰かが助けにきてくれるはず。
それまで生き抜かなければならなかった。
5月
雪が溶け始めたが、一向に助けが来ない。
おかしい、どうする?
いっそ、自分たちで下山するか? いいや、遭難した時は無闇に動かない方がいい。
そんな言い争いを何度かした後、俺たちは山小屋を捨てて、下山することに決めた。
幸いにして、2ヶ月のサバイバル生活で周辺の地理はほぼほぼ憶えていた。
自分たちの渡ってきた吊橋もすぐに発見し、車の所まで戻ってくることが出来た。
私達はすぐに車に飛び乗り、町に戻ることに決めた。
家に帰ったら、二人に増えた私のことを母がなんと言うか、それだけが心配だった。
6月
道中、誰もがおかしいことに気付いていた。
高速道路に一台も車が走っていないのだ。路肩に乗り捨てられているものもあったが、どれも止まっていた。
何かがあったのだろうが、何かはわからない。
そうして僕らは、山荘から出てほど近い都市にたどり着いた。
そこで車を降りざるを得なかった。
都市の入り口に大量の車が乗り捨てられていて、それ以上先に進めなかったからだ。
僕らは車を降りて……奴らに出遭った。
7月
奴らは遠目には人間にも見えたが、黒くてヌメヌメとした肌と、鋭い乱杭歯を持っていた。
暗闇に潜み、生きているものはなんでも食った。
力は強く、高い敏捷性を持っていた。映画に出てきた、某エイリアンが近いだろうか。
唯一の弱点は日光。
ゆえに昼間は暗い場所には決して入らず、夜は決して物音を立ててはいけない。
そんな文章が書かれた日記を奴らに出会う直前に手に入れたのは僥倖だった。
しかし、私たちは愚かだった。誰もそのことを信じなかったのだ。
異変があるのは分かっていたのに。
私が二人いるという時点で、この世界は何かがおかしいはずだったのに。
最初にやられたのはCだった。
今、私達は防音設備のある家に隠れている。
夜が怖い。
8月
1ヶ月も町にいたのは、ここで何が起きたのかを知るためだった。
どうやら数ヶ月前、奴らがどこからともなく現れたらしい。
山からとも、海からとも、空からとも言われているが、とにかく出処はわからない。
奴らはあっという間に人間の住んでいる区画に侵食し、その全てを食い尽くした。
人間がどうなったのかはわからないが、それなりに大きい都市はほぼ壊滅状態だった。
あまり希望は持たない方がいいだろうとAは言った。
しかし、希望を持つなと言われた所で、私達はどこへ行けばいいのか。
9月
山に戻ろうという案が出始めたのは、どうやら私達の寝床が奴らにバレ掛かっているようだとわかったからだ。
夜になると、家の近くを奴らが徘徊するのだ。
その数は次第に多くなっている。
日記には書かれていなかったが、人間を食い尽くすような生き物だ。
足跡を辿るぐらいのことはできるのだろう。
しかし、足跡を辿れるなら、山に逃げても同じではなかろうか。
結局私達は踏ん切りがつかず、何度か寝床を変えるにとどめていた。
滅びたとはいえ文明を離れるの、嫌だったのだろう。
10月
私達がサバイバル生活をしている間、奴らは山に来なかった。
もしかすると、奴らは雪が苦手なのかもしれない。
そんなBの推測に、私達はうなずかざるをえなかった。
今晩は見つかるかもしれない、今晩は切り抜けられても明日は……そんな不安を抱えた毎日に限界が来ていたのだ。
ちょうど、山に雪が積もり始めていた、というのも理由の一つだろう。
私達は出来る限りの食料と燃料をかき集めて、車に戻った。
そして、山へと戻ったのだ。
11月
無駄だった。
奴らは私達を追いかけてきた。
確かに雪は苦手なようだったが、それ以上に
なんとか橋を落として遅延はしたものの、奴らはビルの壁面だって登る。すぐに追いつかれるだろう。
私達は例の山小屋で、奴らが来ないことを祈りながらガタガタと震えていた。
そんな中、Aが言った。
山小屋の四隅に一人ずつ立って歩き、別の角にいる者の肩を叩いて回るのだ、と。
あれをやってからおかしくなったのだ。
もう一度やれば、戻れるかもしれない。
藁にもすがる思いだった。
A、B、私、私の順に背中にタッチしていき……最後の私は、誰にも触れることは無かった。
山小屋の入り口がガンガンと叩かれ、何かが侵入してきた。
強い光を浴びせられ、部屋の中が照らされる。
「大丈夫か!?」
救助隊員が、そこにいた。
12月
あの日、私は元の世界に戻ってきていた。
もう一人の私もいなくなり、死んだはずのCの姿もあった。
気付けば12月だった。
私達は2月に旅行に出かけ、丸一年も見つからなかったらしい。
一年間なにをしてきたのかと聞かれても、他の三人の記憶はあやふやで、証言は食い違った。
まるで四人がそれぞれ違う体験をしてきたかのようだと、取り調べをした警察官はぼやいていた。
私が体感した3月から11月までの出来事は一体なんだったのだろうか。
怪しげなきのこを食べたせいで見た幻覚とか、その類のものだったのかもしれない。
ただ、一つだけ確かな事がある。
……戻ってきた瞬間、私の時計が他の三人のものと比べ、五分だけズレていたということだ。
……。
という大冒険の末、今年もなんとか乗り切ることが出来ました。
あまり更新できなかったのも、こうした苦境にあったからだとご理解いただければありがたく思います。
ともあれ、今年もありがとうございました。
来年も頑張ります。