プロローグ、語りの起点 ――コミュニケーションとしての『語りかけ』
2017年06月13日 (火) 02:12

 田舎のバス停、
 ひっそりとした喫煙室、
 ビル外の休憩所の、自動販売機とベンチ。
 知らない人と顔を合わせながら、妙な間合いで、
 一緒にいる事。
 そこで、ふと話しかけられる、感じ。

 又は、
 無視できない顔見知りを、道端で出くわし、
 ふわりと挨拶して、
 近状をなにげなく説明する、感じ。


 プロローグというのは、ある意味、こういう事です。


 だから、最初の一言は、間合いを作る一言。
 だから、無難な選択として、天気や景色の話が選ばれやすい。
 大抵共感できるからです。

 そうして天気を語りながら、自身を相手に伝える事で、お互いのスムーズな関係性をつくってゆく。
 結婚報告やら法事報告やら、仕事が大変だとか、辞めることになったとか。
 自分の立場を説明することで、相手が下手に気を回さないようにすることでもある。


 プロローグは、読者を選別する行為でもある。
「自分はこういう感じですけど、それでもいいのなら、聞いてくれますか?」と。
 読者は、そうした態度も含めて、聞くか聞かないかを考える。

 「こいつは丁寧なやつだぞ! とりあえず不快にはならんだろう」
 「こいつは不躾だが、えらく面白いやつだ! 聞く価値がある!」
 「誰に向かって話かけているんだ? 少なくともオレじゃねぇな」
 「やたらと偉そうに語りやがる。何様かってんだ」

 小説における語りってのは、双方向ではなく一方的なもんです。
 だけど、それを一方的と思わせたら、ダメだったりする。
 その為の、雰囲気。

 もちろん、「聞いて!聞いて!」というスタイルもあります。話に飢えた方々なら、「じゃあ、聞いてみようか!」となるからです。 又は、大げさに役を作って語りかけるのもありです。ただし、相手が興味をもっている場合に限りますが。 当たり前ですが、どんな相手かによって、語りかけが違ってきます。


 プロローグが下手な人は、『語りかけ』のタイミングが酷いです。
 棒読みのセリフだったりします。
 言葉の連なりが単調です。 では、

 どうすればよくなるのか?

 良い作品を沢山よむのも一つですが、歌を聞くのも一つです。詞における出だしは、わりと参考になります。

 語りとは、声の延長にあり、つまり、歌なんです。平坦に歌うか、感情ゆたかに歌うか、で、まったくニュアンスは違ってくる。 だから、

 まず、音を意識するといいと思う。
 次に、イメージの広がりとしてのメロディ。
 最後に、整合性としての意味。

 小鳥たちのさえずりのような、純粋な、音としてのリズムと響き、そして、間。
 語りとは、声を響かせる事。歌を届ける事。そして、
 音楽は調和。
 自分との、読者との。
 

 あくまで語りにおいての話。
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