桂=ハリマン仮協定と小村寿太郎
2015年06月18日 (木) 22:35
 小村寿太郎外相は、ポーツマス条約締結により日本が獲得した満鉄、南満州鉄道について、米国の鉄道王ハリマンが桂首相に持ちかけた南満州鉄道共同経営案を潰しています。この南満州鉄道共同経営案は、私が調べた限り、元老では井上馨が積極的に賛成し、伊藤博文や山県有朋も消極的に賛成したもので、桂首相は仮協定の締結まで行っています(残る元老の松方正義の態度は、私が調べた限り不明でした。)。このハリマンの南満州鉄道経営案を潰すために、小村外相が主張したのが、モルガン財閥による資金援助の話です。ルーズベルト大統領のいとこが金子堅太郎を通じて小村外相に持ちかけたとのことですが、この資金援助の話は調べるほど、雲をつかむような話になってきます。なぜなら、結局、モルガン財閥からの資金援助が満鉄に行われた形跡が見当たらないのです。ハリマンは1億円(当時の日本の1年の国家財政の約4割)を満鉄経営のために出資すると言っています。当然、それに匹敵する額がモルガン財閥から提供されないとおかしいのですが、資金援助の話し合いが実務者レベルで行われた形跡さえ見当たりませんでした。黒野耐氏によると、満鉄の資本2億円のうち1億4280万円は英国資本によって調達されたとのことで、となるとモルガン財閥の資金援助の話はどこに消えたのでしょうか。
 ネットだとこのあたりは陰謀論があるようで、ルーズベルト大統領は米国の国益から満鉄経営に米国人が参加することは中国に反米運動を引き起こすと考え、ありもしないモルガン財閥の資金援助の話を小村外相に持掛けて、小村外相は騙されてしまった。そのために日本は苦労して、満鉄の財源を探す羽目になったというのですが。幾ら何でもと思います。むしろ、小村外相としては、米国人が満鉄経営に参加することは日本の国益にならないとして、桂=ハリマン仮協定を潰した後、最終的にモルガン財閥の資金援助も拒否したと考える方がしっくりきます。実際、桂=ハリマン協定を潰すのに小村外相は清国の同意が無いと満鉄経営に関して、そんな協定は結べないとかなり無理な論法まで主張しています(当時の清国に満鉄経営に関して日本の要請を拒否する力はありません。)。
 本当にモルガン財閥の資金援助はどこに消えたのか、不思議でなりません。
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