今年こそ格調高く行こうと思ったのに…。

2017年 01月26日 (木) 07:38

第二回捜査会議に3週間もかけてしまいました。
以後は快調です。

「だって、タカの奴、お乳に触るんだよ」
 神戸駅のコンコースでようやく宵美をつかまえた。一足遅れていたら電車に乗ってまたどこかへ行ってしまうところだった。改札口まで行っては引き返し、何度かそうして迷っていたと見えて、ホームレスの風体をした男にーー帰りたいけど帰れないってやつかよ、ねえちゃんーーと、声をかけられていた。
 ちょうどそこへ明美が現れたものだから、宵実は意を決したように改札口のほうへ向かう。明美はその腕をつかんで引き戻そうとした。二人の応酬を、壁に背を預けてワンカップ片手に体躯座りしたホームレスは眺め、子連れ夫婦や、女子高生などが見て通った。
「盛り上がったらそういうことになるでしょう、男なんだから」
「じゃあ、タカピーもほかの男と違わないじゃないか」
「それはそうよ。でもあんたを傷つけたりしなかったでしょう」
「わかるもんか、腹が立ったから置いて来ちゃったーー」
「あんただって盛り上がったからホテルに一緒に行ったんじゃないの? ああいう所はそういう場所だと知らなかった?」
「知ってるよ」
「じゃあどうして?」
「わからないよ。……いつもそうなんだ」
 花瓶が薄い陶器製だったから粉々に砕けただけで済んだ。硬いものか、ガラス製だったら、大変なことになっていた。
「昨夜(ゆうべ)はどこに泊まったの?」
「マンガ喫茶」
「どうして帰って来なかったの」
「警察につかまるの嫌だし、あんたがまた怒るだろうしさあ、どっかへ行きたい気分だったんだ」
「怒りゃあしないわよ。青山君が警察沙汰になんかするものですか。青山君も反省していたわ。彼もまだ女の扱いに慣れてないのよ」
「あいつの怪我は?」
「大したことはなかった」
「あたしーーどうしてこうなんだろう……」
「もういいから、さあ帰ろう」
「いやだ!」
「どこ行くつもり?」
「どこだっていい! どっかへ行きたい」
「どこへ行ったって、あなたからは逃れられないのよ」
「もう沢山だ!」
「たこ焼き屋のおばさんが、日曜日は忙しかったって、嘆いてたわよ」
 宵実は足を止めた。
「……おばさんとこにも行ったの?」」
「あんたが来てから、子供たちが増えたから、週末は一人じゃさばききれない。できればフルタイムで雇いたいっていってたわ。住み込みで」
「住み込みで?」
「近くに四LDKのマンション借りているらしいの」
「ふ~ん」
「帰りたくなかったら、そっちにでもーー」
「あたしを追い出したいんだね」
「そんなわけないでしょう。食事の支度してくれる人なんかほかにいないもの。一人の時は、仕事から疲れて帰ったら食事の支度が面倒臭くて。お酒とお摘みで済ますことが多かった。部屋が温まったらテレビ観ながら居眠ってたし」
「親父みたい」
「親父ギャルって歳でもないけどね。電気が点いてない、暗く冷たい部屋に帰るのって、淋しいものなのよ」
「あたしだってそうだよ。野宿する時は焚き火して、捨て猫と寝た。高い高~いとかして」
「なんかそんな小説があったわね。独歩だったか、鷗外だったか? ――で、どっちにする?」
 明美は宵実のコートの腕をしっかりつかまえて離さなかった。

独りで書くのはなんとも味気ない。
ダークマターの続きでも始めようかな、格調高く。 

コメント

ありがとうございます!
昨年末に中学時代の創作友達を亡くして、張り合いを失っておりました。
励みになります。
なしか 空  [ 2017/01/27 09:38 ]
明美と宵美の会話が普通に面白いですね。今後の活動にも期待していますのでこれからも変わらずに頑張ってください。ダークマター続編楽しみにしております(^^)
ヨシ  [ 2017/01/26 08:20 ]
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