「優しき兄、ヘンゼル」
「愛しき妹、グレーテル」
「あなた達だけが魔女の家への行き方を知っている」
「あなた達だけが魔女の家からの帰り方を知っている」
「「私たちに、導《しるべ》を」」
ヘングルゲーム。それは、若者の間で急速に流行り始めたゲームだった。参加者の『未来』を賭し、参加者の『願い』を叶えるための危険なゲーム。しかしそのスリルと、ゲームを攻略すればどんな願いも叶うという甘い言葉に、ゲーム参加者が途絶えることはなかった。
橋山優里もまた、そんなヘングルゲームを知っている若者の1人だ。しかし優里には特に叶えたい願いなどなく、そのゲームの存在をどこか他人事のように感じていた。そう、この時までは。