── それは歓喜した ──
それは、感情を持たない存在の筈だった。
それは、地球と言う惑星を覆い尽くす様に散布されたナノマシンをコントロールする為だけの擬似的な人格に過ぎなかった。
だが、その時……それは ──彼女は ── 間違いなく歓喜したのだ。
人類最後の一人となった者。
彼女が愛した最愛の者。
彼に与えられた最後の命令 ── 人類の再生命令 ── その過程で、機械である彼女は、愛情に目覚めてしまった。
── 彼にもう1度逢いたい ──
その一心から、彼女は世界を歪めていってしまう。
幾つもの種族が滅んだ。
幾つもの文明が滅んだ。
幾つもの国家が滅んだ。
永遠とも思える時の果てに、彼女はようやく彼に再会を遂げた。