その日、二十二歳の菊池あさひは家出の途中だった。
あさひは岩手県花巻市のJR釜石線沿線の土沢駅の近くに住んでいる。ここは宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」のモデルと言われている場所だ。そんなあさひは家を出て、盛岡に住む親友の小夜子の元へと身を寄せるところだった。
だが、盛岡に到着するはずだった電車は、『まほろば温泉駅』という、深い霧に包まれた不思議な駅に着いてしまう。戸惑うあさひに、売店の老婆は、ここはこの辺りを治める姫神がひらいた、人ならざるモノたちのための温泉、『まほろば温泉』なのだと告げる。もし困っているなら、姫神から温泉の管理を任されている湯守にきいてみるといい、とも教えてくれる。
白い霊狐の白夜に案内されて、湯守に会いに行くことにするあさひだったが……
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