昔々ある所に、危機に瀕した国がありました。積み重なる困窮に喘いでいましたが、あるとき、天から一人の少年が現れました。その少年は、絶望的だった状況を覆し、誰も真似することの出来ない方法でその国を救いました。
しかし、彼を知る人々や彼自身も、誰も彼を「勇者」だとは言いませんでした。
何故でしょうか。
少年が謙虚だからでしょうか?
その強大な力に無自覚だったのでしょうか?
人並外れて優しかったのでしょうか?
いいえ、どれも違います。
彼はただ、見ていられない程にチキンで、憶病な少年でした。
これは、誰よりも勇者から遠く、誰よりも主人公から見放された哀れな少年のお話です。