ある日いつものように裸眼で風呂に入っていると、鏡の裏にまだらに生えたカビが顔のように見えることに気づいた。顔と言っても、人間の顔ではない。目が離れて口も横に伸びた、ナマズのような顔である。目と口の間のカビが、ちょうどナマズの髭のように見える。
「ナマズ……。」
私はそう呟くと、ナマズの口が動いたような気がした。気のせいかと思い髪を洗い始めると、どこからか
「おう。」
と、声がした。まさかと思った。
「なんだよ。」
ナマズが喋った。
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