棺桶の中の親友の顔が、あまりにも安らかな顔だったから
「何で、言ってくれなかったんだ」
口から出た言葉は、自分でも理不尽だとわかるような言葉で。
わかっている、わかっていた
何度も相談されたことを
理解できなかった、笑い飛ばしてしまった
あいつは真剣だったんだろう、でも、理解できる筈がなかった
いつの間にか、世界が少しずつずれていくなんて、そんな事。
気を静めようと、いつものようにポケットから煙草とライターを取り出そうとして
「…ん?」
俺の記憶違いだろうか
ポケットには何も入っていなかった
まるで、最初から何も無かったかのように。
これは少しずつ変わる世界に取り残された男の話。