世界は、まるで曼荼羅だ。
二年前に発生した飛行機事故の数少ない生存者、天城和巳は、あるとき死への恐怖が薄れていることに気が付く。だが和巳は自身の異常から目を背け、妹と共に裕福とは言えないまでも幸福な生活を送っていた。
しかし、次第に日常は非日常へと形を変える。
隣町の集団体調不良。自殺したはずの男子の目撃証言。知人である不良の死。
そして。
「貴方の日常は、もうどこにもない」
少女の言葉をきっかけに、和巳の周囲で傷害事件が立て続けに発生する。
事件の被害者は、いずれも和巳が大切に思う人々ばかりだ。
壊れゆく日常。闇より迫る悪意。赤い月と黒い月。
正義と――悪。
何のために生きる。何のために戦う。
これは、世界に叛逆する一人の少年と、一人の少女の物語。