彼女が死んでしまったのではないかと、ぼくは思った。
ドリンク二人分を手に戻ると、彼女はデッキチェアの上に身を横たえ、パラソルの作る影の中、死んだ小動物のように丸くなっていた。水着に包まれた腹は呼吸に軽く上下しているように思えたが、さだかではなかった。ぼくはドリンクのなみなみと注がれたグラスを傍らのテーブルに置くと、彼女の口元に耳を近づけた。微かな息の音が聞こえた。彼女は生きていた。眠っているだけだ。その表情からは、いかなる種類の苦悩も読み取れず、まるでこの世の不幸すべてを免除されているかのようだった。
若かったころのぼくの話、彼女の話。僕らは分かり合えない。