日本に上陸した非常に強い感染力を持つウイルスの拡大が影響し、僕たちの卒業式は卒業生と教職員のみで行われる小規模での実施を余儀なくされた。
卒業生代表、佐藤恵(さとうめぐみ)は卒業式前最後の登校日の放課後、どうしようもないこの事態に嘆き泣きじゃくったが、僕らにはどうしようもない問題だ。
「卒業式って舞台で……卒業生代表って立場で……私、立派になったんだよって。もう心配いらないよって……。堂々と笑顔を見せてあげたかった……」
彼女の願いが叶うことはない。ただの高校生である僕たちは、あまりに無力だ。それでも——彼女は決して諦めなかった。送辞が読まれなくたって、僕らの卒業を心から祝う気持ちは確かにそこにあるから——彼女は壇上に立って、答辞を読み始めた。
「送辞もないのに答辞かよ」——そんな言葉を背に受けながら。
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