不思議な風習が根付く日本にある小さな島、迎海島(げいかいじま)。
その島では仏教での「盆の時期」を迎えると「海還り」と呼ばれる時期が到来する。
その期間は海へと還った死者が、在りし日の姿で戻ってくるのだという。
誰もが死者と向き合うために、正しき別れを行うための儀式として、哀悼と祈りを込めて過ごす中、夕凪 慧はこの「海還り」に憂鬱を感じていた。
幼少の頃に死別した幼馴染、坂口 千春の姿が何時までも見えない慧は、その理由が分からないまま幾年の時を重ねていた。
そんな時、もう一人の幼馴染、七瀬 誠と再会する。
誠と再会した慧は、千春の死と再び向き合う事となり、この島の風習「海還り」の意味を知っていくこととなる。
そして、彼を取り巻くひと夏の一日は、人生に影響を与える特別な一日へと変わってい
く。
これは人を思う物語。生きていく上でキミが何時か向き合わなければならない大切な事。
それは無情にもやってくるものだから。それを受け止めて認めて前に進むための……前進の物語。
悲恋 日常 青春 海還り 群像劇 現代 和風
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