――私は、誰?
数百年の時を生きる《魔導人形》、アリス・ド・カオス。彼女は過去にある人物から自身のパーツの一部である《眼》を奪われ、その苦しみに耐え続けてきた。そして現代でそんな彼女と出会う少年、渡良瀬錬磨は、友人と呼べる存在がいなく、その日もいつものようにどこかの不良を束で相手にし、一人残らず返り討ちにし、そして自宅に向い、いつの間にか自室にいた彼女と出会う。彼女はそんな彼に契約するように話を持ち掛ける。彼は初めは断固として断る。しかしその後、強烈な目眩に襲われ、ある夢を見る。その夢の中には二人の少女の姿があり、一人は見知らぬ少女で顔に手を当て、もう一人は地面に膝をつくアリスの姿だった。彼はもう一人の少女がその場から離れて行った事を確認してからアリスの傍へと駆け寄り、その姿を目撃してしまう。それは鮮血で染まる開ききった瞼ともう片方の目から涙を流す彼女の姿だった。彼はその姿を目の当たりにし、そして目醒め、例え話と確認、そして決意を固め、彼女とその、契約と称した口づけを交わし、様々な世界へ向かう事となった。その目的はただ一つ。彼女が奪われた、その《眼》を取り戻す為だ。
幾つもの世界へと足を運び、そこで彼らと出会う幾人もの刺客でる『選ばれし器を試す者』の存在とその人物達が背負う過去、その人物達との残酷な殺し合い。互いが互いの思いを胸に秘め、その旅は幾日も過ぎていき、やがて決戦の時は訪れる。
彼らが倒すべきその黒幕との一戦と、彼があの日見た夢、その全てが交差し、彼らの長い旅に終止符が打たれる。
――ありがとうアリス。キミに出会えて、本当によかった……大好きだよ。
スプラッタ
読了時間:約106分(52,523文字)