(他サイトで一部を書き直しながら、重複投稿をしていきます)
欽之助は、失恋の痛みを抱えながらあちこち放浪した末、田舎に手頃なあばら家を見つける。そこで質素な生活をしながら小説を書き続けることにしたのだが、直ぐに様々な怪異に見舞われるようになる。
一番の悩みの種は、夜中に畳の下から腕が伸びてきて、ねえ、抱いてと呼びかけてきたり、女の首が天井から落ちてきたりすることだった。欽之助は乱れ髪と呼んでいたが、これとは別に影法師のようなものが、家の中をうろついたりするのだった。
ある日、清という不思議な老婆が現れ、半ば強引にお手伝いとして住みつくようになる。
その後欽之助は、地域の人たちとの交流の中で、次のことを突き止める。影法師の正体は、この屋敷の跡取り息子であった白河安太郎であること。清さんは幼い頃に白河家に引き取られ、安太郎とは互いに想い合う仲であったのに、彼の母によって別の男に嫁がされたこと。乱れ髪の正体は、安太郎の妻であった藤尾奈美であること。そして、3人ともすでに亡くなっていることなど。
安太郎は特高警察から激しい拷問を受けた際に、そのうちの一人から凌辱され、男としての機能を失っており、これがためにやむなく奈美と離縁していたのである。
安太郎が使っていた二階の洋室にはトランクが置かれてあり、その中から市松人形のものと思われる顔の部分が見つかった。また、座敷の床下からは、同様に二本の腕が見つかる。この人形は清さんがこの家から嫁ぐ際のどさくさで失くしたものであり、それを安太郎が大事に持っていたものと誤解した奈美さんが、嫉妬の末に人形に取り憑いていたのだった。これこそが、昔〈わらわんわらわ〉として地域の人たちを怯えさせ、さらに欽之助を毎夜悩ませた乱れ髪の正体だったのである。
欽之助のおかげで誤解も解け、安太郎さんと奈美さんは元の鞘に収まる。清さんも、自分に助けを求めていた人形の無事を見届け、屋敷を去っていくのだった。
ところがが、今度は京子が失踪したという。国会議員である彼女の父親は欽之助を疑うが、どうやら秘書の片桐に拉致されたらしい……。
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