ある男、ギンジナには才能が無かった。
あらゆる者に蔑まれ、考えうる限りの罵りや嘲りを受け、絶望の渦の中で歪な人格を形成していった。
踏みつけられている時、ふと彼は思った。
「自分が皆と同じような事が出来たなら、認められるのだろうか。」
それはふとした思いつきに過ぎなかったが、それでも、ギンジナには諦められなかった。
数々の、神とさえ呼ばれる様な研究者が為しえなかった事象を可能にしようと言うのだ。
周囲から才能無しと烙印を押されたギンジナには無理だろうと自分でも思った程だ。
しかし、それからその生涯を閉じるまで、ギンジナは血の滲む努力を積み重ねた。
ついに完成するその日まで。
そして最期の時、世界はギンジナに最初で最後の慈悲を与えた。