投げ捨てた卒業アルバムが開き止まったページには、縦に四列、横に八列に並んだ小さな正方形のマスの中に将来への希望に満ちた笑顔を浮かべたクラスメート達が収まっていた。だがそのマスの中になんの感情も読み取れないひとりの男子生徒がいた。それは親友の青山幸雄だった。そこに写る幸雄の顔からは人間が持っている喜怒哀楽すべての感情がそぎ落とされていた。いま改めて見ると、その写真は幸雄の人生そのものを表しているようだった。写真撮影の一週間後に幸雄はこの世を去った。親友がこの世を去ったときから、怜音が見る景色は、はっきりと変わった。人と接する時、目の前で笑っているこの人も明日突然消えてしまうんじゃないかという恐怖を感じるようになった。今から四年前、一緒に卒業するはずだった親友は、何を想い、どんな景色を最後に見たのだろう。
シリアス 男主人公 学園 平成 現代 バッドエンド
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