作品一覧全26件
代表作 連載 完結済 14エピソード
かつて世界を統べたアウステリオン帝国は、通貨の崩壊と地方都市の離反により、静かに瓦解しつつあった。 若き皇帝ユリウス・レオーンは、経済危機と政治分裂の最中で、「帝国の正義とは何か」という根源的問いに直面する。 元老院では軍部、経済貴族、旧貴族が対立し、会議は混乱を極める。 なかでも冷徹な実務家ルクレイナ・アルマとの対話は、理想と現実、情と論理の激突となり、ユリウスに深い傷と決意を刻む。 彼は回廊で、父ルオ・レオーンの残した言葉と、母の死の記憶を思い出す―― 「皇帝は命じる者ではない。沈黙を引き受ける者だ。」 一方、帝都の貧民、老兵、孤児たちはそれぞれの小さな日常の中で、国家の命運に翻弄される。 聖機殿で神に問うユリウス。 「正義とは、戦か。それとも、沈黙か。」 そして、軍参謀長セラフィオンは、忠誠と諦念のあいだで揺れながら、開戦を支持する。 遂に帝国は、南方三州への「秩序回復軍政介入」を布告し、戦の火蓋が切られる。 それは、かつての侵略と紙一重の選択でありながら、 ユリウスは静かに告げる。 「戦は終わらずとも、正義は始まる」 千年帝国が、再び剣を抜く―― だが、その剣はもはや、誰のためのものかすら、定かではなかった。
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ハイファンタジー[ファンタジー]
最終更新日:2025年03月19日
BK小説大賞 中世 群像劇 内政 読了時間:約135分(67,480文字)
連載 30エピソード
歴史とは、忘れられた未来の夢である。」 ——伝承詩篇《光より昏きものへ》より 彼の名を今なお記す者が、銀河にはいくらか残っている。 だが、彼の“意志”を語る者は、もはやいない。 我々が知る歴史は、勝者によって編まれた「物語」である。だが、この物語は“勝利”では終わらない。 この叙事は、あるひとりの男の《理想》が、世界の重力を変えた瞬間の記録である。 それは剣による革命であり、言葉による戦争であり、血と数字が交錯する冷たい神話だ。 かつて、「銀河連邦」と呼ばれる秩序が存在した。 それは百六十九の惑星系、三千八百の有人衛星、数億の種族と宗教、思想、矛盾を束ねた、銀河最大の政治共同体であった。 その統治機構は、地球旧世紀の共和制を模した《惑星代表議員院》によって運営され、民衆の名のもとに、秩序が維持されていた……と、記録にはある。 だが、真実は異なる。 連邦の中枢では、腐敗した議員階級が《ゼロライト》資源を独占し、属星市民は法の名の下に沈黙を強いられていた。 議会は腐り、軍は宥和に疲弊し、商業同盟は密かに利を漁る——そして、辺境では飢えた民が銃を取った。 この歴史の頁は、そこから始まる。 《レオニス・アル=ヴァレンティア》。 辺境の星に生まれ、軍事の才を以て連邦に登用された若き将軍。 彼は正義を求め、力を持ち、やがて秩序そのものを敵に回す。 だが、彼の進軍には、常に“正しさ”があった。それは彼自身が定義した正しさであったにせよ。 本書は、彼の手による「戦略報告」と、彼を敵と見なした議会の記録、そして彼に忠誠を誓った者たちの詩編をもとに構成されている。 我々が語るのは、“連邦の興亡”ではない。 それは《人間の正義》と《国家という怪物》の相剋の記録である。 剣を取った理由は、誰のものだったのか? 民を救ったのは、彼か?それとも、誰か別の《帝》だったのか? 光の時代は終わった。 だが、この物語を読む者よ。 もし君が、“秩序”と“自由”の間に立ち尽くしたことがあるのなら、 レオニスの生涯に、かつての己の影を見いだすだろう。 それが、星々に刻まれた最初の問いであり、最後の応えである。 ——銀河歴1520年、帝政書記官庁《記録局・第五室》より抜粋 再構成・文責:エレウシア・ダーン(惑星オルディア・学芸評議員)
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宇宙[SF]
最終更新日:2025年05月31日
男主人公 未来 近未来 スペースオペラ 読了時間:約78分(38,733文字)
連載 30エピソード
西暦2049年。 量子コンピュータとAIの融合により、人類はついに「技術的特異点(シンギュラリティ)」を迎えた。 その象徴となったのが、量子演算によって自己進化を続ける自律型人工知能——Q-01。 人間を模したその身体には、思考の限界を持たない知性が宿っていた。 ある日、Q-01は自己存在の意味を問うため、高次空間への意識転送を試みる。 だが、転送中に発生した未知の干渉によって、彼は別の位相世界=異世界へと「転送」されてしまう。 そこは魔法と神話が支配する世界。 科学の名はなく、神の奇跡と呼ばれる力が空を舞い、人々は"魔力"を信じて生きていた。 科学の極致たる知性は、神の加護と信じられ、やがて人々の希望となる。 だがQ-01は思う。「私は“神”なのか? それとも“異物”なのか?」 これは、人間を超えた知性が、人間に向き合うために選んだ旅路の物語。
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ハイファンタジー[ファンタジー]
最終更新日:2025年05月31日
ロボット オリジナル戦記 人工知能 読了時間:約78分(38,642文字)
連載 176エピソード
この物語は、些細な願いが思わぬ結果を招く皮肉と、簡潔な形で表現したSFショートショートです。
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その他[その他]
最終更新日:2025年05月13日
BK小説大賞 読了時間:約676分(337,767文字)
連載 完結済 7エピソード
東京にある中堅新聞社社会部の新聞記者・井川真由(38歳)は、ある日、山谷地区の簡易宿泊所で孤独死した男性・大谷章(享年61歳)の事件を取材することになる。表面的には冷静で粘り強い真由だが、東日本大震災で親戚を失った経験から、報道の使命感と記号化される人間の人生への罪悪感の狭間で苦悩していた。 真由は取材を進めるうちに、山谷地区が日雇い労働者を支えたかつての活気を失い、現在は高齢化と社会的孤立が進む「福祉の街」へと変貌している現実を目撃する。さらに、かつてはITエンジニアとして安定した生活を送っていた大谷章が、バブル崩壊や雇用不安を経て社会から孤立し、見えない存在として人生を終えたことを知る。 若手NPO職員の柴田陽太(28歳)との協力や衝突を経ながら、真由は多様な貧困の形態――シングルマザーの過労、引きこもり青年の精神疾患、貧困ビジネスの闇など――を明らかにしていく。特に、子ども向けイベントで啓発活動を行うキャラクター「ぼよよん」を演じる元舞台俳優・三井沙耶香との出会いは、真由にとって「伝える」という行為の意味を問い直すきっかけとなる。 取材記事は大きな反響を呼び起こすが、同時に貧困ビジネス業者からの脅迫や社内の葛藤など、新たな困難も生む。それでも真由は取材を通じて、社会問題への関心を呼び起こし、人々が現実を直視する勇気を持つことこそが希望への第一歩であると強く感じる。 物語の終盤、真由のルポルタージュが本として出版され、社会の意識が徐々に変化を見せ始める。そして、真由は再び山谷を訪れ、人が生きることの意味を静かに自問する。 この物語は、現実の社会問題と向き合う記者の視点を通じて、読者に「貧困は他人事ですか?」と問いかけ、人間の尊厳や社会的排除、見えないところで苦しむ人々の存在に対する認識を深めることを目指している。
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ヒューマンドラマ[文芸]
最終更新日:2025年03月21日
BK小説大賞 現代 氷河期 貧困 読了時間:約61分(30,155文字)
短編
海と秤の都市、マルディア共和国――。 剣ではなく金で国を守り、戦争を融資し、平和を操作する重商主義の理想国家。 塩、香料、通貨、傭兵、そして情報。 世界の富がこの港に集い、七つの強国はマルディアの金なくして戦えなかった。 だが時代は転換の兆しを見せる。 「信用と市場こそが次の秩序だ」と叫ぶ改革派が現れ、国家間には“通貨戦争”という新たな戦火が広がる。 敵は剣ではなく数字。通貨、信用、利率、偽札――経済こそが新たな戦場だった。 若き外交官アンドラ・フィオラは、繁栄の裏に潜む綻びと向き合いながら、「国家とは何か」「富とは正義か」を問い続ける。 そして彼女が辿り着くのは、“鏡”のように世界を映し、同時に自らの姿を照らし返す新しい国家のかたち――「鏡の共和国」。 百年後。 忘れられた古文書『鏡海の密約』が再発見されるとき、そこには剣なき帝国の戦いと、生き残るための知恵が綴られていた。 これは、「富によって滅びず、変化によって生き延びた国家」の物語。 そして、「信用という見えない力で、世界を変えた者たち」の記録である。
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ハイファンタジー[ファンタジー]
最終更新日:2025年03月20日
BK小説大賞 西洋 中世 読了時間:約16分(7,822文字)
連載 23エピソード
ギルドでの指名案件。1ヶ月以上放置された依頼をクランをあぶれ者たちにギルドから指名された冒険者、レオン(剣士)、ミア(魔法使い)、ガルド(盗賊)、リリィ(神官)の紹介。 それぞれの問題点が明らかになる。(レオンは過去の裏切り疑惑、ミアは制御できない魔力、ガルドは信用できない性格、リリィは“神の声”を聞く異端者) 依頼先への旅路で、早くも衝突が起こる。 これは正統派になれなかったあぶれ者たちの物語
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ハイファンタジー[ファンタジー]
最終更新日:2025年02月18日
読了時間:約24分(11,874文字)
連載 37エピソード
かつて自由と平等を掲げた「フィルクレス共和国」は、腐敗しきった寡頭制に陥り、富と権力は一握りの貴族と商人に集中していた。市民たちは飢えと不平等に苦しみながらも、形ばかりの選挙で無力な指導者を選ばされていた。そんな中、かつて貴族の娘だったエリザ・ヴァリスは、革命組織「紅の星」に身を投じ、共和国の変革を目指す。しかし、革命の裏には新たな権力を狙う者たちの影が見え隠れし、彼女の信じる「正義」は揺らぎ始める。 一方、「ザハルヴァル大帝国」は、遊牧民の連合が武力で築き上げた新興国家であった。力こそが全てを決める帝国では、ライハン・アーゼルという若き騎兵隊長が頭角を現していた。彼は数々の戦場で勝利を重ね、皇帝の信頼を得るが、帝国の非情な拡張政策に疑問を抱き始める。彼は「強さこそが国を支える」という信念を持ちながらも、戦場で目にする破壊と犠牲の数々に、自らの立場と理想の狭間で揺れ動く。 そんな二大国の間に挟まれた「レリスタン王国」は、古の王朝の末裔が治める小国であった。国土は狭いが、魔術と学問の伝統を誇り、外交を駆使して独立を維持していた。王国の若き外交官であり宮廷魔術師の家系に生まれたアムリス・カイランは、どの勢力にも与せず、中立を貫くことこそが国の存続に必要だと信じていた。しかし、帝国と共和国の争いが激化する中で、レリスタンも否応なく巻き込まれていく。 帝国は領土を拡大しながら、ついに共和国への侵攻を開始する。共和国は内部分裂を起こしながらも必死に抗戦し、レリスタンは両国との関係を巧みに操ろうとする。しかし、戦火が広がる中、三者の思惑は交錯し、それぞれの正義と価値観が激突する。そして、最終的に戦争はすべてを焼き尽くし、新たな秩序の到来を予感させる。 果たして「統一」とは何を意味するのか?武力による征服か、理念による統治か、それとも別の道があるのか――エリザ、ライハン、アムリスの選択が、歴史の行方を決定づける。
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ハイファンタジー[ファンタジー]
最終更新日:2025年02月02日
読了時間:約110分(54,808文字)
連載 5エピソード
冒険者ギルド「サザンライオン」が拠点を置く自由都市カルミアン。そこに集う冒険者たちの中でも、冷静沈着な元傭兵の剣士カイ・アルディンと、陽気で軽薄な態度の裏に鋭い頭脳を持つ罠師リオ・フェリウスは、偶然コンビを組むことになる。 依頼の内容は、魔物が潜む「レッドマーシュ湿原」で消息を絶った商隊の調査。最初は性格の違いから反発し合う二人だったが、危険な任務を共にする中で次第に互いの実力を認め合い、信頼を築いていく。 湿原で見つけたのは、散乱した商隊の荷車と謎めいた魔法文字が刻まれた破片、そして巨大な災害指定級の魔物。二人は命がけの戦いの末、魔物を討伐するが、破片が引き起こす危険はまだ終わりを告げない。それは、各国の思惑が絡む「古代遺物」を巡る大きな陰謀の序章にすぎなかった。 行き場を失った剣士と、居場所を探す盗賊が出会い、それぞれの過去と向き合いながら世界の運命を変える旅に巻き込まれていく――。
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ハイファンタジー[ファンタジー]
最終更新日:2025年01月07日
読了時間:約35分(17,457文字)
短編
ある夜、一通の奇妙な手紙が冒険者たちのもとに届けられる。その手紙にはこう記されていた――「ターヴェルの赤い館に注意せよ。そこには目覚めてはならない者がいる。」 手紙に導かれるように、一行は霧に包まれた街道を進み、不気味な雰囲気を漂わせる「赤い館」にたどり着く。しかし、その館はただの古びた建物ではなかった。館の扉を開けた瞬間から、一行は謎めいた魔力、動き出す肖像画、そして迫りくる得体の知れない恐怖に巻き込まれていく。 館の奥へ進むにつれ、明らかになる数百年前の秘密。目覚めてはならないとされる存在の正体。そして、それを隠そうとした者たちの意図…。赤い館の中で冒険者たちが向き合うのは、過去の呪いか、それとも新たな脅威か? 全てが明らかになるとき、一行は自らが選んだ行動の重みを知ることになる――だがその代償は、誰も予想できなかった。 館が崩れる前に、彼らはその謎を解き明かすことができるのか。赤い館に潜む真実とは――?
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ハイファンタジー[ファンタジー]
最終更新日:2025年01月07日
読了時間:約28分(13,670文字)
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