とある世界の均衡が崩れそうになり、それに辟易していた女神は一人の青年の部屋を訪れていた。青年は突如現れた女神に困惑しながらもしっかりと自分に与えられる使命を聞いていた。
「まずい、あと20秒しかないわ。しっかりと聞きなさい。アルト。さっきも説明したように貴方にはこの能力を与えます。使いこなせばきっと世界の均衡を取り戻すことができるでしょう。」
女神は端正な顔立ちをした青年を見つめ、焦り気味に言葉を紡ぐ。女神がこの世界にいられのはせいぜい数分 。世界を変えるために、捻出した限りない時間だ。伝えられた青年は背筋を伸ばし、目を大きく見開いた。
いい目だ。女神は純粋に期待を寄せていた。この男がこの先の世界を…
「あの、アルトって誰ですか?僕のことですか?」
女神焦る、残り8秒
「君の名は?!」
「たけ…しっ……あっ。」
最後まで言い切らないうちに女神は北村たけしのまえから姿を消していた。
女神焦る。残り5秒。
一瞬で人違いに気づくとデータベースからアルトを発見し、部屋の前に姿をあらわす。
「なまえはっ!?早く名前をいえ!」
青年ビクつく。残り3秒。
「…え?」
女神もこうなる事は分かっていた、いきなり人が現れて、大声で名前を確認されたら言葉なんか出てこないことを。
刹那、諦めた。
「ヘイトで世界を救え!」
ざっくりとした趣旨を伝えた女神はどこか満足そうに消えて行った。
当のアルトは女神が消えていくのを見ながらも異世界に飛ばされた。