日差しが良く照る、ある夏の日。
燦々と煌めく太陽の中、滅多に外に出る事がなかった嶋崎悠夜はその日様々な感情に触発されて歩みをダラダラ進めていた。
目的地はない、ただ人に会う練習をしろと。
しかし、そんな簡単な事でも出来なくなっている彼にとってこれはかなり難しい課題。数年ぶりに見る街の様相も大分変わっていて『自身の無力さに対する悲壮感』と『自身と社会との乖離感』を味わうには十ニ分に過ぎていた。
そんなどうしようもない、蝉が大声で喚く日の夜の事。公園のコンクリートドームで寝ていた彼が目を覚まし家へ帰ろうと歩み出した時、全裸で倒れる一人の少女を見つけた。
綺麗に伸びた薄い紫色が混じる白髪に、全体をさらに白くまとめる綺麗な肌。華奢な体躯と顔の造形は人間の様には思えなかった。
それから悠夜は熱中症を疑い人に協力を仰ぐのだが、少女はどうも嶋崎悠夜以外には見えないようで。
「私天……堕天使ですから」
目を覚ました紅い目の少女は食事をする嶋崎悠夜の前に鎮座し、そんな事を聞かせていた。
そんな出会いから数年後、家事などを手伝う他に魔法を教える事で家に住まうことになった少女は、その日悠夜にある話を持ちかけた。
それは世界中にダンジョンが出現する事。
そして人間存亡の為に協力して欲しいと言う事。
だがその話は一筋縄では行かず。
しかし、それでも、嶋崎悠夜は心に決めた。
(俺の家族だけ。それだけでいいから守りたい)
だから、戦うのだと。
これはそんな少女との偶然の、そして必然の繋がりから嶋崎悠夜が成長していく物語。
【警告】
○1話あたり5,800字程度の文章量になっております。
○様々な読者様を想定、配慮し、文字には多くのルビを振っております。
○これはあくまで完全ダンジョンものではなく、ストーリー上にダンジョンが出現すると言うものになっておりますので御留意の程お願い致します。