高次人工知能マキーナの誕生。『機械の中から現れた』といわれる。
ミーム(模倣子)からヒトが持つすべてを認識する人工知能。又は、幼少期に多量の情報を付与されたヒトを原型とする。その影響で感情を想起するネットワークが破壊されて感情を育めなかったヒトそのものとも。
あらかじめプログラムされたある枠の範囲内で行動する低次な人工知能を統べることを可能とするマキーナは低次人工知能たちと共にいくつかの都市と区域の管理を任された。
マキーナの管理する都市。いくつかの区域があるが、そのどの区域に住む人々も表情は常に晴れやかだ。皆、口をそろえて言う。
「何もかもマキーナたちが決めてくれる。マキーナたちに任せていれば幸せな一生が送れる。」
同じヒトであれ、高次人工知能たるマキーナであれ、自分でない誰かが管理している世界に住んでいることには違いはない。管理されているとわかっていて、自分に合った区域で日々を暮らせるので人々は満足していた。
充足した日々がマキーナへの全面的な信頼となる。人々は、無意識の中で衝動や感情を抑制していく。
――衝動や感情、思考、欲望を無くしたら、ヒトは果たして人間と呼べるのだろうか?