六原くんは日本画を専攻している美大生であり、愛妻家である。
僕は油絵を専攻している美大生であり、馬鹿である。
円は油絵を専攻している美大生であり、阿呆である。
宮崎県の私美大生である僕たちはこれといって将来を展望するでもなく、なんとなく美大というワンダーランドを満喫していた。
六原くん、彼一人を除いては。
これは怠惰を貪り、油絵具に塗れた僕の四年間の内、秋の物語だ。
ことの始まりはいつもの学食、いつもの席、いつものメンツ。
ただ違っていたのは、僕たちの目の前に黒づくめの女の子が立ったってこと。
「六原先輩に相談があります」
その一言がきっかけになって、僕たちは季節外れの肝試しに出かけることになる。
目的はゾンビの正体を探り出すこと。
報酬はチョコレートとタバコとハンバーガー。
馬鹿げていると思うかい?
でも、いつだって芸術の世界はそんな『馬鹿げた』ことで満ちている。