母は、五歳のころ、僕と弟を捨てて出ていきました。
父は、その尻拭いを僕と弟に押し付け、少しでも出来ていなかったら怒鳴りつけました。
弟は、全ての負担を僕に押し付け、寂しさを紛らわすように僕を毎日叩きました。
僕は、そんな現実が怖くて、妄想の世界に『もう一人の僕』を作り、失敗しました。
『もう一人の僕』は、僕のことを不幸だと言います。だけど僕はそう思いません。そう思わないと、何かが壊れてしまう気がしたからです。
何より、彼女に出会ってしまったから。
僕なんかよりずっとずっとつらい目にあってきた、小さな小さな女の子。
真っ白な髪のこの子を僕は――助けたいと思いました。
その先に、僕が本当に求めるモノがある気がしたから。
これは、僕が、女の子を幸せにしたいと願う物語。
幸せに『したい』と願う、物語。
――そう、『もう一人の俺』が願ったんだ。
――だから、俺は――