「10年後、またここで会おうね」
小学生の頃、幼馴染の沙耶と交わした、ひとつの約束。
忘れかけていたその言葉を胸に、俺は久しぶりに故郷へ帰った。
地元の町。なつかしい空気。あの公園で──
昔と変わらない笑顔の沙耶が、そこにいた。
10年ぶりの再会は、どこか不思議で、懐かしくて、そして少しだけ胸が痛かった。
一緒に海へ行って、縁日を歩いて、花火を見上げて。
ぎこちない距離が、ゆっくりと近づいていく。
そして3日目の朝。
俺は、彼女との約束を信じて、一人でスコップを握った。
タイムカプセルの中にあったのは、ふたつの手紙。
そこに綴られていたのは、10年前の“願い”と──俺の知らなかった、たったひとつの気持ち。
──あの夏に置いてきた想いが、10年後の俺を待っていた。