……そう、それでそこの二つ目の角を左に曲がると、元来た場所に戻れますよ。わからなくなったらまた人に聞いてくださいね。ほんとは一緒にいけたら良かったんですが、すいませんちょっと急いでて。
いえいえ、大丈夫です。人に会いに来たんですけど、さっき後ろ姿っぽいのを見つけたし、たぶんそんなに急には消えないはずですから、大丈夫、大丈夫。
そうだ、この辺を拠点にしている占い師の話って聞いたことあります? 僕きょうはその人に会いに来たんですよ。
最近ちょっと嫌なことが立て続けにおこりまして、なんとかしなければならない、諦めるか、別の対応を考えるかで、えんえんと悩んでいたのですが、このあたりで突然見知らぬ人にからまれまして。
夜でした。夜中でしたね。人が暗い顔して傘さして歩いているところを、その人は後ろから急にぬっとあらわれて、僕の肩をがしっとつかむんですよ。
で、その人は言うんです。
壁の塗装を煎じて飲みなさい。
急にあらわれてなに言ってんだこいつってなりますよね! しかも酒臭いんですよ、もう酔っ払いの戯言確定じゃないですか、僕やめてくださいって言って肘で小突こうとしたら、避けられてしまいました。
酔っぱらってるのによく避けたなと思って見たら、その人はずぶぬれのまま、こっちを見て、笑ってるんですよ。
口が動いたのが見えて、でも雨降ってたしなに言ってるか聞こえなくて聞き返しました。
そしたら、お前が不幸になる必要はない、って!
ちょっとびっくりしますよね! なんでこの人、いまの僕の状況を知っているんだろう。
で、詳しく話を聞いて、その人の言う通りにしてみたら、これが信じられないことに、すべてが順調に動き出しまして!
お礼を言うために何度かこのあたりに来ているのですが、なかなか捕まらず、ネットにその占い師さんらしい情報もなかったので探し方が近辺の人に聞くとか歩き回るとかってアナログなやり方しかないんですけど、さっきとうとうそれっぽい姿を見つけたので、これから追いかけてみようと思ってるんです。
あ、そうですね話をしている場合じゃなかった。
あなたも時間があったらその占い師に会ってみるといいですよ。
大丈夫たぶん見つけられますよ。今の時代なんだってネットで宣伝しないと認知されないじゃないですか、そのあたりも言ってみるつもりなので。では、道中お気をつけて!
日常 占い師 現代
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