真白菜月は書痴気味の中学三年生。
この一年、雨宮広慈の書いた一冊の本だけを繰り返し読み続けていた。
作者の病死のために完全とはとても言えない物語だったが、ところどころ欠けたかたちを、菜月は何より愛している。
中でも、解決されないままの三つの伏線は、菜月をどうしようもなく魅了した。
梔子の谷。
沈丁花の館。
金木犀の丘。
勇者がたどることのなかった旅路。
そこでどんなお話が広がることになっていたのか。
菜月は、いつもこう願っていた。
「わたしがそれを見られたらいいのに」
──その願いは、唐突に叶うことになる。
年の差 青春 冒険 女主人公 勇者 恋愛 ファンタジー アイリス大賞5
読了時間:約354分(176,949文字)