「真に大切なものを奪われた時、人は■となる」
魔法が日常に存在する隣り合わせの世界・魔力世界。現実世界で起きた二度目の世界大戦が呼び水となったが如く、この世界でもまた世界を二分する戦争が始まっていた。
後の名を第二次魔力世界伝播大戦。古き神を廃し北欧の神代を再創せんと目論む一人の若き将校によって引き起こされた大戦である。その大言壮語に偽りはなく、世界は瞬く間に戦火に包まれた。
蛇目の魔法使い、テオドール・ギフトはそんな世界をただ傍観していたが、秋が吹き曝す頃に一つの報せを耳にしたことで参戦を決意した。弟子、竹中崇の徴兵である。世界の平和も無辜の民の生死も国家の存亡も意に介さぬ男は、ただ己の弟子一人を救うためだけに剣を取った。
これは勇者の物語に非ず。運命に巡り逢えなかった者達の物語。
蛇の因果と銀の弾丸が、神と成った男を撃ち墜とす物語である。