広く肥沃で、しかし争いの絶えない大陸。時として幾万の兵がぶつかり合う動乱の世には噂が絶えなかった。たった一人で千の、あるいはそれ以上の兵を滅ぼす、魔法という超常の力が存在してもなお異常な戦士たち。 そんな世界の混沌の渦にまた一人の戦士が混じる。名はセン。師の生涯ただ一つの願いを叶えるため、センは師より教わった技で戦場を駆ける。

少年は少女を見て思った。これは運命だ、と。 少女は少年を見て思った。これは許しがたい屈辱である、と。

マルタは大学名誉客員教授にして冒険団に所属する冒険者だった。 深い見識と卓越した魔法を操るマルタは仲間に頼られ、また頼りながらも危険な大地を冒険する。 そんなマルタが真に求めるのは、幼い頃に見た美しい植物、命の木。 冒険者たちはそれぞれの目的を胸に未踏の土地を、滅びた時代の遺跡を、危険の跋扈する大地を冒険する。

キャスカム。 迷宮、ダンジョンと呼ばれるものを内包する街。 そこに住む多くの困窮者が最後の博打に飛び込む夢の場所。 スラムに住むならず者の少年、サザムもまた夢を求めてそこへゆく。 得られるのは死か、夢か。 今日もまた迷宮はならず者どもを食らう。

二千十九年四月二十九日、平成の昭和の日より令和に送る。輝ける未来と私たちの生きた過去を思いつつ書く。

神がいて、悪魔がいる。 竜が空を飛び、巨人が大地を闊歩する。 魔物といわれる生物がはびこり、 摩訶不思議な力を持つ人もまたはびこる。 おおよそなんでもある、とある異世界の騒動録。 短篇集です。