作品一覧全57件
代表作 連載 42エピソード
 綺羅びやかな披露宴会場。  嘲笑。  私の席にだけ無い椅子。  殿下と公爵令嬢様の強張った顔を見て、私は微笑みを浮かべた。  これから始まる、惨劇を予感しながら。  これは王族と親交を持ってしまった平民の娘が、身分違いの友情を育みながら成長する、愛と勇気と希望の物語である〈嘘〉。
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ヒューマンドラマ[文芸]
最終更新日:2025年06月10日
読了時間:約518分(258,656文字)
短編
「……?」  ……何かが聞こえた気がした。いや、確かに聞こえる。猫が喧嘩でもしているのだろうか?  なんとなく気になった私は、雨に濡れたまま鳴き声の元へ向かった。するとーー 「フォレストウルフの群れか。でもあれは狼の鳴き声じゃなかった。猫でも仕留めたのか……いや、あれはッ!?」  抜剣。直ちに突撃。敵の数は4。豪雨で鼻と耳が利かなくなっているのか、それとも飢えすぎて弱っていたのか。何かを咥える狼の背を両断するまで、他の三匹は反応できていなかった。 「ウゥゥゥゥ!!」  野生動物らしくすぐに威嚇を始めたが、今から威嚇するようでは負けを認めたようなものだ。私は狼が咥えていたものを胸に抱きながら、残る雑魚に鉄剣を叩き込んだ。  群れにあって、最初に獲物を食らう権利を持つのはリーダーだ。そのリーダーの背骨が両断された時点で、統率を失ったこいつらの死は確定していた。  捨て犬のように情けない悲鳴を上げた3匹に介錯をした私は、すぐに獲物の正体を確認した。  ……間違いない。人間の赤ん坊だ。
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ヒューマンドラマ[文芸] R15
最終更新日:2025年06月07日
ネトコン13 シリアス ほのぼの 女主人公 西洋 冒険 日常 育児 聖女 読了時間:約44分(21,827文字)
短編
「僕が……僕が、過ちを犯したばかりに……!」 「そうですね。でも仮にクラウス様が清廉潔白だったとしても、同じ結果になったかもしれません。だってクラウス様……子供に憧れてましたものね。私と同じで」  ぷるぷると震えていた彼だったが、最後に一縷の望みをかけるかのように、とんでもないことを口走った。 「僕達、ベルナデットが来るまでは、幸せな結婚生活を送っていたよな……?」  今となっては、それすらも悔やまれるほどだ。 「もう一度やり直せないかな……?」 「別の女を抱いた手で、もう一度私を抱けるとお思いですか?御免被りますわ。私は貞淑でありたいと思ってますので」 「うっ……ううっ……!」  その後クラウスは、乗ってきた馬車に泣き顔のまま乗り込んだ。向かう先はボロボロになった屋敷か、それとも義両親の屋敷か。  これは、離婚をすれば全てが終わると思っていた一人の悪女と、選択を間違えた愚かな男女の物語である。
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異世界[恋愛] R15残酷な描写あり
最終更新日:2025年05月20日
ネトコン13 シリアス 女主人公 西洋 悲恋 離婚 悲劇 既婚 読了時間:約57分(28,266文字)
短編
「ふん……陰気だな。まだ自分は偽者ではないと言いたいのか」  それはもうこれまで、何度も主張してきた事だ。何を言っても誰も話を聞かず、既に処刑執行が決まったという状況で、今更何を言えと。 「今度はだんまりか……相変わらず我々をイライラさせるのが上手いことだ」 「では、一日でも早く処刑なさることですね」 「言われずともするさ、予定通りにな。また会おう、死刑囚アネモネ」  そう吐き捨てた殿下は、来た時と同じく整然とした歩調で、地下牢から去っていった。 「…………疲れた」  砕かれ、曲げられてまともに動かせなくなった手足。足りない食事。そして両親と妹、婚約者だった殿下から浴びせられる罵詈雑言と、有象無象から浴びせられる絶えない嘲笑。  もう、疲れた。何もかもどうでもいい。 「来世では、もっと平凡で、温かな人生を送りたいな……贅沢は、言わない、から……」  最後の祈りは、自分の為だけに捧げると、心に誓っていた。
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ヒューマンドラマ[文芸] R15残酷な描写あり
最終更新日:2025年04月28日
シリアス ダーク 女主人公 西洋 中世 魔法 聖女 後悔 断罪 トゥルーエンド 読了時間:約22分(10,847文字)
短編
 ……まじ?この人、善意で注意してたってこと?あの言い方で!?いやいやいや、踏まれたことを責め立てたようにしか聞こえなかったよ!?叱り方下手すぎでしょ! 「でもこんなだから、よく煙たがられますの。あまり私の近くにいない方がよろしいですわ。周りからどう観られてるか、分かったものじゃありませんから」  それはこっちの台詞なんですが……。  ん?まてよ?…………これだ! 「あのー……」 「何かしら?そろそろ初日説明が始まりますわよ」 「もしよろしければ、アレクサンドリーヌ様の今後のご指導について、私にマネージメントさせて頂いてもよろしいですか?」 「……え?」 「私、感動しました。他人のためにそこまで叱れる人がいるだなんて」 「え、ちょ……ご指導だなんてーー」 「是非、協力させてください。なんなら子分や手下、いやいやいっそ取り巻きの一人にしてもらっても構いませんので」 「子分……!?て、手下って、何言ってるか分かってますの……!?」  ここに、あったじゃないか。ストレス発散になって、親も納得出来て、かつ卒業後も不利にならないような趣味が。  ずばり……悪役令嬢のマネージメントだ!この人と協力して、不良貴族を正し、怠けた連中を公然と叩きのめす!先生からの評価も上がるし、卒業後のアピールポイントにもなるし、何より溜め込んだストレスの発散になる!  しかし、私はまだ知らなかった。この素晴らしい考えが、後の悲劇と鳥肌を生むことを。
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異世界[恋愛]
最終更新日:2025年04月22日
春チャレンジ2025 ギャグ ほのぼの 女主人公 西洋 中世 日常 青春 身分差 悪役令嬢 読了時間:約33分(16,159文字)
短編
高校一年生の春。 変われる子もいれば、変わるしかない子もいる。 私のように変わらないことを選ぶ子もいる。 そして幼馴染のアイツは……変わらないまま、スタメン投手になる夢を叶えていた。 野球部のマネになってほしいと毎日せがむアイツと、小説に打ち込みたい私。 かつての夢を諦めた私と、夢を叶えたアイツの目標が、重なる時なんて無いと思っていた。 そしてそれは、私とアイツにとって、終わりの始まりだったのだ。
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ヒューマンドラマ[文芸]
最終更新日:2025年04月17日
春チャレンジ2025 シリアス 女主人公 学園 現代 ハッピーエンド バッドエンド スポーツ 野球 読了時間:約13分(6,134文字)
短編
 金の入った袋を握りしめたまま、少女は考えた。男の意図は分かりかねるが、積極的な排除はしてこない。恐らくこの先、何度挑んでも殺されはしないだろう。  だが同時に、今のまま何度挑んでも、一生この男を超えることは出来ないに違いない。多分レベル99に至ったとしても。それほどまでに今の自分と男には、決定的な何かがあった。  両親の仇だけを考えてきた少女の中に、僅かだが炎が宿った。それが嫉妬なのか、執着なのかは、この時はまだ本人にも分からない。 「申し遅れました。私の名はリリー・クラウディス。失礼ながら、御尊名を賜りたく」  当然無視された。だが反応を予想できた事が、何故か少しだけ楽しくもあった。  リリーは男の丸太よりも少し小振りな幹に持ち手を作り、男の真似事をし始めた。それが彼女の日課になった。そして男の方もまた、無視を続けた。  寡黙な剣聖と、剣聖に挑み続ける少女リリー。これは勇者パーティーの壮大な冒険譚には残されなかった、小さな復讐劇である。
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ヒューマンドラマ[文芸] R15残酷な描写あり
最終更新日:2025年04月09日
シリアス 男主人公 女主人公 勇者 西洋 魔法 ゲーム 復讐 読了時間:約25分(12,168文字)
短編
 ダンスホールの中央で、二人の男女が注目を浴びている。  一人は平民。もう一人は王子様。  そして王子様は、あろうことか平民の前で跪いた。その瞳は、本物の熱意で燃えていた。 「あの日からずっと、君に恋い焦がれていた。身分差があることは分かっている。それ以上の壁が、自分たちの間にあることも。だが絶対に、君を幸せにする。君を守り抜く。だから――」  王子様が開けた小箱の中には、見るからに高価な婚約指輪が輝いていた。 「結婚を前提に、交際させてくれないだろうか
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ヒューマンドラマ[文芸]
最終更新日:2024年07月16日
読了時間:約26分(12,948文字)
短編
 目の前の状況について行けない。  何故、平民の私が王城で白いドレスを着ているのだ。  何故、こんなにも多くの人々が、私を祝福しているのだ。 「…今日は良き日だ。ようやく念願が叶ったな」  何故、私の横に、殿下が立っているのだ。  ――新郎として。
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ヒューマンドラマ[文芸]
最終更新日:2024年07月13日
読了時間:約34分(16,675文字)
短編
 綺羅びやかな披露宴会場。  嘲笑。  私の席にだけ無い椅子。  殿下と公爵令嬢様の強張った顔を見て、私は微笑みを浮かべた。  これから始まる、惨劇を予感しながら。
作品情報
ヒューマンドラマ[文芸]
最終更新日:2024年07月09日
読了時間:約29分(14,372文字)
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