インカ帝国末期。平穏に思えた国内で次々と不思議な現象が起きていた。ある晩、月のまわりを囲むように丸い虹が三重にかかった。神官たちはその現象を何度も占うが、すべて凶兆を示したのだ。 ■■■■■ その十二年前、首都クスコでは不思議な女の子が産声を上げていた。褐色の肌に黒い髪の民族の中で、その子は透き通るような白い肌と薄蒼の瞳。そして何よりも金色に輝く髪をしていた。やがて国の運命を見定める役目を負うことになるその娘は、成人すると『コリ・コイリュル(金の星)』と名付けられた。 ■■■■■ 混乱期にあったインカ帝国、やがて海の向こうから白い人間がやってきて帝国は一気に崩壊のときを迎える。皇女として生まれながらその容姿から数奇な運命を辿らざるを得なかったアルビノの少女コリ・コイリュルの目を通して語るインカの終焉の物語。 ■■■■■■■ 【第一部】 幼い頃偶然に出会ったクイとクッシリュ。淡い恋心を抱いたまま別れたふたりは、成長し敵対する王家の者同士として再会する。ふたりの想いはなおも強くなるが、やがて国を二分する戦争が起き……。