私は、人から忘れられてしまう。
名前も、顔も、声も。
でも――ひとつだけ、法則がある。
「私を好きになった人だけは、私を覚えていてくれる」
そんな日々のなかで、かつて出会ったひとりの男性と、支店で偶然再会する。
忘れていたはずの私を、彼は覚えていた。名前を呼んでくれた。
これは、“名前を呼ばれる”ことで存在を証明された、ある女性の物語。
世界中の誰が忘れても、この人が覚えていてくれるなら、それでいい。
そして、私もまた――この人の名前を、呼び続ける。
女主人公 平成 日常 ハッピーエンド
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