かつて、様々な花を咲かすことの出来る不思議な力を持った【花守(はなもり)】という一族があった。
国々は、花守をめぐって戦を起こし、戦の種となった花守の一族は迫害され、悲惨な運命を強いられたという…。
花守の乱から幾数年。
とある北の最奥に、玉(ぎょく)という小国を統治する王があった。
玉には、かつて大国を震撼させた花守の生き残りがいた。
生き残りである少女は、玉の庇護の下、慎ましいながらも、幸せに暮らしていた。
そんな王には、三人の御子がいた。
一人は武勇に長け、一人は知勇に秀れ、そしてもう一人は二人に比べ武勇や知に劣っていたが、優しい心を持っていた。
三人の御子は、花守の少女を慕っていた。
一人は少女を愛し、一人は少女を想い、そしてもう一人は少女を恋(こう)ていた。
花守の少女もまた、三人の御子を慕っていた。
一人を敬い、一人を焦がれ、そしてもう一人を慈しんでいた。
三人の御子と花守の少女は、互いに互いを思い合っていた…−−−
その頃、花守を求め、遠国の若き王・飛燕(ひえん)が、玉へと進軍を始めていた。
国と花守の少女を守るため、王は飛燕へ立ち向かうが、その矢先に王が急逝してしまう。
王の遺児である三人の御子。狙われる花守の少女。
「ずっと一緒だと信じていた。だって今も、あなたは隣にいるのだから」
様々な想いが交差する中、三人の御子と花守の少女の運命はいかに?
オリジナル 三つ子
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