仕事もそこそこにこなし、日頃の鬱憤もかかえ、ストレスにまみえる現代の日本人。
橘蓮は、夜食を求めてコンビニに入った。
暗がりから、ライトに照らされた店内に入り、眩しさに瞼を閉じたその先の光景はーー夜の山中。
目前にいる、両手を固く握る少女が口を開く。
「成功......した?」
彼が召喚されたのは、魔術や魔物が存在し、闘いが身近にある世界であった。
<無能者>
その世界で存在する全ての生物に備わるはずの魔力がない。
魔力がなく、当然、魔術を使うことができない。
その世界において稀に存在する最底辺に近い存在。
これは、無能が無能だと理解し、誰かがいなければ生きていけないと知っている。
故に、誰かを頼り、知恵を振り絞り、自分の命は安値と嘲笑う。
そんな彼が、誰かを、そして何かを守りたいと願い、奔走する物語。