その少女には脚がなく、代わりに巨大な蛇の尾がついていた――下半身が蛇の形をした少女・アイシャは、『博士』と共に人里離れた場所に暮らしていた。そんな彼女には小さな願いがあった。いつか外の世界を知ることだ。生まれながらに車椅子での生活を余儀なくされた彼女には、自由というものがなく、行動範囲は狭く限られていた。そんなある日、アイシャは友人のリングポールと一緒に家出を決行する。初めて出かけた街に浮足立つアイシャ。しかし街の人間たちは、アイシャの下半身を見るなり悲鳴を上げた。彼女はそこで初めて自身の身体が他者とは大きくかけ離れたものと知る。心に大きな傷を負ったアイシャに、追い打ちをかけるように告げられる唐突な別れ――彼女の存在が明るみに出たことで、生みの親である『博士』は研究者として責任追及を受けてしまう。刑務所に搬送されるまでの最後の面会、アイシャは博士の口から自身が人工的に作り出された『キマイラ』だということを知らされる。失意の中、博士と離り離れにされたアイシャが連れられた先は、自身と同じ境遇を抱えた子どもたちが屋根を一つにする養護施設だった――。