家族を失い、友人を失い、愛するものを失った男
そんな男が最後に死に場所に選んだのは、誰一人として生きて帰ったものはいないと言われる「艶竜のダンジョン」
そしてそのダンジョンで男は大鬼によって致命傷を負わされて。
男は死の瞬間に考えた。
--もし時を戻せるのなら、もう一度この手で...
男は最愛の人の姿を思い浮かべながら静かに息を引き取った。
僅かばかりの沈黙が訪れる。だがその沈黙は眩いくらいの光と共に消え去った。
あたりには男を殺した大鬼の姿、男の死体すらなく、あったのは男が死ぬ瞬間まで見ていた銀のロケットだけであった。