大学4年の安藤菜月は、7月もおわりに近づいているのに、内定が一つもないどころか、一次選考さえ通過したことがなかった。新型コロナウイルスの影響で、合同企業説明会は無くなり面接も急遽webに切り替わり、採用人数を減らす企業も出始め、一気に変わった時流に翻弄されているうちに、夏が始まろうとしていた。焦りを感じる菜月のもとに、申し込みした記憶のない企業から面接の案内が届く。藁にも縋る想いで面接に臨んだ菜月は、なぜかド派手な宴会場に通されて……。
「働きたくない。そして、それ以前に、もう生きていたくないの」
「――結局人って、我が身が一番可愛いのよ。だから、他人が障害抱えてても平気な顔して受け入れたように個性って言うの。でもね、それが自分のこととなると、途端に受け入れられなくなるの」