たった一人で魔王を倒した最強の魔術師――エリオ・ルーングレイス。
“英雄”と讃えられた彼の存在により人間と魔族との間に勃発した“魔絶戦争”が終結し、世界に平和が訪れた。
しかし、エリオは突如として王国を裏切り、王城に火を放つ。
何故“英雄”がそのようなことをしたのか、それは誰にも分からない。
ただ誰もが彼を讃えることをやめ、恐怖するようになった。
この日を境にエリオは“英雄”ではなく“大罪人”となった。
そんな英雄の反乱から、五年の歳月が流れた。
表舞台から姿を消した“大罪人”エリオはアイオン森林地帯に身を隠しながら静かに過ごしていた。
ある日、いつも通り森の中で過ごしていたエリオは、魔王軍が残していった魔界の魔物に追われていた少女を助ける。
少女はエリオを“大罪人”だと気づくと、恐れるわけでも軽蔑するわけでもなく――
「わたくしを、誘拐してくださいまし!」
――どういうわけか、目を輝かせながら土下座したのであった。