気付くと僕はここに居た。
純粋な彼と共に歩む白い世界。
白だけが広がる、無のみが広がるこの世界で、彼が見つけたのか結晶だった。
白い世界で一際目立つように爛々と輝いていた結晶は、彼に優しい記憶を見せる。
悪夢と共に……
母さんの死を切っ掛けに始まる悪夢。
行き過ぎた愛による嫉妬。
友達を仲良くするために哀しみを背負い。
紅への壊れた愛情は、憎悪へと変わり果て。
彼等は中学1年の春に、異世界へと舞い降りる。
見覚えのある景色。そこで繰り広げられる「紅」の奪い合い。
国を追い出され、迷い果てた彼が会うのは……
国を捨て、勇者を捨て、愛した彼を追い求めた彼女は……
彼女の為、嫉妬と憎悪に身を任せた彼は……
皆の為、絶望を乗り越えようと、絶望に抗った彼は……
ーーーー僕は結晶を握っていた。
白い、白い、美しい結晶を握っていた。
結晶は色を変え、僕の「感情」を解き放とうとする。
怒りか、哀しみか、喜びか……はたまた……
これは、彼が歩む記憶巡りの旅。
これは、彼の人生を決める……
共犯者と協力者による、運命の奪い合い。
レールの上に敷かれた物語。
決められた結末に向かっていくだけの物語なんて……
そんなの、誰も求めていない。
そうだろう?
自由な選択が、物語の中の住人にはない。
そんなの許されるわけがない。
「神」さえいなければ?
「僕達」を支配し観察し執筆する「神」の存在がなければ……?
「僕達」は真の自由を求める。
「白」の存在も
「紅」の死も
「黒」の憎悪も
「蒼」の絶望も
………………………………………………………
僕は選択しない。できない。
僕は自由を求める。
悲恋 青春 ダーク 男主人公 魔法 ハッピーエンド バッドエンド パラレルワールド タイムリープ 第四の壁 精霊 オリジナル
読了時間:約163分(81,422文字)