十六歳になった年の夏。年に一度、青く輝く月が昇る夜に空を飛ぶ。それが、一人前の魔法使いとして認められる唯一の手段である。その式典が開かれる街イニトゥーワには、多くの若い魔法使いたちが、自分の箒を片手に集まっていた。その人ごみの中、箒を持たないものが二人いた。一人は、長い前髪で表情を隠した少年。一年前の事故が原因で飛べなくなった”元天才”。もう一人は、ある施設から逃げ出してきた盲目の少女。箒もを持たない二人の出会いが、やがて『式典』の行方を大きく変えることになる。
二人は、自分たちの夢の為、そして仲間の未来のために空を飛べるのか―――。