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「秘密」とは、他人に知られないようにすることであるが、多くの人は秘密を知りたがる。相沢和輝は、慎重な性格ではあるがごく普通の高校二年生である。ある日、和輝のもとに一通のメールが届く。そこには「秘密閲覧サイトへのご案内」と書いてあった。興味本位で開いたそのサイトにはたくさんの「秘密」が書いてあった。和輝は最初、誰かが気まぐれに作った悪ふざけのサイトであろうと思った。だが、先日学校で起こった事柄がそこに秘密として書かれているのを発見する。和輝の同級生南庄一が和輝の意中の相手、雪村晴海に告白したことが三日も前に「南庄一が雪村晴海に告白をする」と書き込まれていた。そこでようやく、和輝はそのサイトを信用しだした。サイトで見ることができる秘密はレベル別に分けられていた。自分自身の重大な秘密を書けば、レベルの高い秘密が閲覧できるようになっていた。自分自身の秘密を書かずとも見ることができる内容は「テストで赤点を取った」だとか「先生に怒られた」だとか、つまらないものばかり。最初はそれで満足していた和輝であったが、だんだんそれでは物足りず、友人である水野誠の万引きを書き込んだ。しかし、それでも一番高いレベルである秘密は閲覧することができなかった。そこで和輝は、そのサイトで出会った品川雄一の自殺に協力をした。「自殺を手伝った」という秘密を書き込むと、ようやく和輝の望んでいた一番高いレベルの秘密を見ることができた。しかし、そこに書いてあったのは「このサイトはすべて実験である」であった。わけがわからない和輝のもとに大人になった庄一と誠がやって来、未来から来た研究者だと告げた。そう、和輝は実験に利用されていただけであったのだ。それを知った和輝は混乱したが、これは和輝が望んだことだと二人に説明され、ようやくすべてを思い出した。秘密に対する人間の考えを研究するものとして、和輝は過去の自分で実験をしていたのだ。庄一と誠はその研究仲間であった。すべてを思い出した和輝は、妻の雪村晴海が待つ自宅へと一年ぶりに戻ろうとした。しかし、雄一の自殺を手伝ったということが世間に広まってはまずい。そこで、和輝は再び過去の自分への実験をすることを決意した。これが和輝の十度目の実験であった。人は「秘密」に取り付かれてしまう。これが実験の結果なのかもしれない。
作品情報
ノンジャンル[ノンジャンル]
最終更新日:2011年08月29日
ミステリー アンハッピーエンド ファンタジー 暗い 秘密 読了時間:約3分(1,202文字)