アーカルド王国のカーネイル家には、奇妙な伝統があった。それは成人するまでは性別を偽り、周囲の人間に気付かれないようにすること。当然、貴族の子女が入学する学園では女子は男装、男子は女装して入学することになる。
そんな伝統に精神の限界を迎えた者がいた。それはこの物語の主人公、アネスティア・カーネイルの兄、ハロルド・カーネイルである。彼は学園の卒業式の日死んだ目をしていたが、男装した妹と目があった途端に顔を真っ青にして、父に言ったのである。
「父上、このくだらない伝統にいつまで拘っているつもりですか?可愛い妹にまでこんな思いをしてほしくはありません!」
この発言をきっかけに、妹アネスティアの運命は大きく変わるのだった。