作品一覧全3件
連載 174エピソード
「な、にを…何をしてっ…!」  ――ああ…。  そんな顔をしないでください。  これは――…これは、貴方に対する『謝罪』なのです。 「何をしていると、聞いているんだ!」  今にも泣き出しそうな顔をしないでください。  でも…痛い…  痛い…。  私は、夫である彼の目の前で…切腹をした。  自分のお腹を刺したから当たり前だけど…お腹が、痛い…。 「聞いているのかっ?!いや、それよりもっ…早く治療をっ――」  その言葉を聞いた私は、瞬時に差し伸ばされた彼の手を払った。  ――触られたくなかったからだ。  既に汚されてしまった私を…貴方は、私に何時ものように“また”優しく…愛しく…触れようとしていたから…。  私の行動に驚いたのか、彼の差し伸ばされた手は硬直したまま…綺麗な紅い眼が、見開き「何が、起こった?」と、言わんばかりの目で、私に訴えかける。 「…申し訳、ございま…せん…旦那様、私の…私の身勝手を…お許しを…」  私は、腹部の痛みに耐えながら…なんとか言い切ることができた。  しかし――…その後の会話が、覚えていない。  憶えているのは、夫の手の温もりと「分かったっ…待っているっ…!」と、悲願の籠もった言葉だった――…その言葉を聞き終えると…私は、静かに目を閉じた。
作品情報
現実世界[恋愛] R15残酷な描写あり
最終更新日:2025年05月19日
身分差 年の差 悲恋 読了時間:約1,086分(542,597文字)
連載 36エピソード
 ――何時からだろうか?  一体、何時から…わたしは『あなた』様に――…いや。  違う…。  言葉の誤りをお許しください。  わたしは『あなた』様の“本来”に戻ったのですね。  しかし、ほんの“一部”にしか戻られていない…寂しく、哀しいことです。  どうすれば、いいのでしょうか?  一体、どうすれば…わたしは『あなた』様を“元”に戻せるのでしょうか?  難題です。  無心…。  無情…。  そう『あなた』様は、わたしにそう教え込んでいただいたが…難しいです。  ――当時のわたしを思い出してみました。  お恥ずかしい話しで…今もなのですが…今の世の中は、わたしには“棲みにくい”です。  まるで、酸素を奪われた魚のように…必死に酸素を求めて、もがき苦しみ続ける感覚に日夜、襲われています。  そんな右往左往をしているわたしに『あなた』様は、気づいてくださった。  お声を掛けていただいた。  ――嬉しかった。  わたしは「誰でもいいから気づいてほしかった」のだと…遅れながら自覚いたしました。
作品情報
ホラー[文芸] R15残酷な描写あり
最終更新日:2025年05月18日
日常 サイコホラー 読了時間:約222分(110,797文字)
連載 10エピソード
 世の中は、昔から“善”か“悪”であるが“合う”か“合わない”でもある。  甘い。  苦い。  しょっぱい。  酸っぱい。  辛い。  ――まるで、食事の味覚のような世の中。  好き嫌いが『当たり前』に満ち溢れている、世の中。  そんな忙しい毎日を送り続ける貴方のストレス発散は、何ですか?  ゲーム? 食事? マンガ? 小説? スポーツ観戦? 映画? 買い物? 国内・海外旅行? 温泉巡り? 甘いもの巡り? ジム? アーティストさんのライブ?  ――どれも素敵で、素晴らしい発散方法であり娯楽です。  今の世の中様々です。  しかし、既に満ち溢れた娯楽が存在するにも関わらずに過激な“刺激”を欲する人達が、後を絶たない。  ――本能?  本能の他に存在する言葉、それは“欲”と、言います。  欲しくて欲しくて堪らない――…誰もが、行き着く当たり前な“欲”です。  しかし、世の中には“決して”手にしてはいけない『代物』が存在している。  それは“薬物”であり“劇薬”だ。  この話は、自我を持った『人造薬物』の物語――。
作品情報
ヒューマンドラマ[文芸] R15残酷な描写あり
最終更新日:2024年12月26日
日常 サイコホラー 読了時間:約104分(51,671文字)