これは魔法が出現して十数年後――。わたしたちの世界に、魔法がすこし混ざった、そんな世界の話。
最近世間を騒がせている『正義の怪盗』。
必ず予告状を出し、盗むのは、侵入先で一番価値のあるものを一つだけ。そして盗んだものは、魔法道具に換えて、魔法が使えない人々に無償で与える。
そんな怪盗の情報を、集めるように上司に言われた青年は、徹夜をかまして東奔西走するものの、怪盗の逮捕に貢献できるようなそれは一向に出てこなかった。
男である、十五~十七歳くらい、魔法が使えない、怪盗もしくは怪盗の仲間が凄腕のハッカー、それから恋人がいるらしい……。
三徹夜で集まった情報は、たったそれだけ。
さて、どうしたものかと少年が思っていると、怪盗は予告状を出してきた。情報を集めていた青年は、またも上司の命令で、怪盗の警備にあたる。
極度の睡眠不足により、心は荒み、怪盗への恨みと上司への不満は募るばかり。
そんなとき出会ったのは、盲目の少女ミシェルであった。声も出ないらしい。
友人とはぐれたという少女を保護しながら警備を続けていくと、遂に怪盗に相見える。
怪盗の目的は、「世界を変えること」と「ミシェルの目と声を治すこと」。ミシェルのはぐれた友人とは、怪盗のことだった。恋人がいるらしい、というのは、ミシェルを連れて侵入していたため立った噂だった。
魔力がない怪盗は、ミシェルの魔力を借りて、魔法道具を使っていた。
どういう流れか、青年は怪盗から依頼を受ける。『ミシェルの目と声を治す協力をしてほしい』とのことだった。報酬は、青年がかき集めていた『怪盗の情報』。
引き受けた青年は、寝て起きて寝て、それから手紙探しを行った――。
怪盗とミシェルの出会い。
ミシェルの目と声が不自由になった理由と治し方。
『俺があれば』の言葉の意味。
青年は、いろんな人の、いろんな想いを知りながら、今日も依頼を解決していく。
ほのぼの 男主人公 魔法 ハッピーエンド
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