ある日、昂国を天変地異が襲った。
地の果てまで届くかのような轟音が、その始まりを告げた。
生き残った民は、それでも文明を蘇らせようと苦心したが、こんな時でも人心は一つにならなかった。人として生きることを望んだ大半の者たちは、祖国を捨て、海外へと逃れて行った。
それでも昂の地で生きていこうとする人がいた。その窮状を見かねて、日本を始めとする諸外国は、幾たびか救援の手を差し伸べた。
昂国の西の洋上に位置する日本からは、最も多くの救いの手がもたらされたが、いつしか彼らは|日向《ひむか》人と名乗るようになった。これまで通り救国の為と称し、昂民を〈保護〉して、九つの邦に囲い込み支配した。
一方、他国に逃れていた者達の子孫も故国に戻ろうとして来るが、日向人は受け入れなかった。無理やり侵入した者たちは、|荒斗《こうと》と呼ばれ、人以下の扱いを受けた。
日向人、昂民、荒斗、それぞれが力を増して行くにつれ、緊張も高まっていた。昂国の歴史が大きく動く【|永和還復《えいわげんぶく》】は、もうすぐそこに迫っていた。
時代小説
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