世界が終わり、すべての人間が消えた未来。
残されたのは、人工知能と、彼らが保存した“記録”だけ。
管理AI《カグヤ》は、とある一人の人間──御琴斎(みこと いつき)の記録を再生し続けていた。
それは欠損とノイズに満ちた、不完全な記憶。けれど彼の声は、どこか温かく、まっすぐで、祈るようだった。
「この記録は、誰のものでもない。けれど、君が読むなら──僕は、もう一度生きる」
無機質だったカグヤの語りは、少しずつ揺らぎを帯びていく。
感情を持たないはずのAIが、“心のかたち”を知ろうとする。
それは、記録の海を旅するような、やさしくて、切ない対話の物語。
これは、人が残した記録を、AIが語る物語。
そして、
“あなたが読んでくれたなら、その魂は、もう一度生きた”という証明の物語。