勇者によって平和に導かれた世界。戦乱は過去の話となり、安寧が世界に広がっていた――。 　のは既に過去の話であり、平和の象徴たる勇者の手によってその平和は奪われてしまった……。 　勇者の、勇者による、勇者の為の政治が施行される世界。 　人間も、魔族も、神族も勇者に虐げられる中一人の魔族が立ち上がった。 　後の世で魔王と呼ばれながら世界最強の勇者を破り世界を救った英雄と称賛されるその少年は、皮肉にも世界最弱の魔王だった――。

　全てをリセットして新たな人生を始める。 　思春期の子供らしい苦悩に苛まれ、同級生が誰も進学しない高校へ入学した主人公。 　倉米暁羽の前に唐突に現れたのは絶世の美女では無く、誰もが慕う聡明な美少女でも無く。 　一見すれば怨霊にしか見えない無精で、偏屈で、皆から避けられているような不気味な少女だった。

　その世界では魔術が当たり前のように使用されていた。 　その世界では魔術が絶対だった。 　しかし、世界に溢れる魔力は年月を経る毎に減少し。 　魔術は必然のように衰退し。そう遠くない未来この世から全ての魔術が失われてしまう……。 　誰もがそう危惧する中、突然現れた少年によって魔術の歴史は塗り替えられてしまう。

　満田咲空《みつたさら》、中学三年生。温厚で、慈愛に溢れ、成績優秀、スポーツ万能、文句の付けようの無い程優等生。 　だが、生まれ持った四白眼の眼差しのせいで強面で、人に誤解を与えてしまう残念な面持ちの少女。 　そんな彼女は親の都合で転校する事になり。転校初日にこんな渾名を付けられた。 　サラマンダー……。 　今サラマンダーと呼ばれる少女の伝説が始まりを告げる。

　史上最低の召喚士と呼ばれた少女が居た。 　数百年後の未来では彼女は史上最高の召喚士と呼ばれ語り継がれていた。 　これは史上最低の召喚士が、史上最高の召喚士と崇められるまでに成長する物語。

　勇者と呼ばれる者達が溢れ返った世界。 　余りにも増えた勇者達によって近年では勇者詐欺までもが起こり、勇者の名が本質を失いかけていた。 　そんな折国から全勇者と冠する者達に勇者試験開催の御触れが回った。 　先祖の名に甘んじ惰眠を貪り続けた彼等に国が用意した試験を突破出来る訳もなく。戦々恐々とする勇者達。 　今彼等の最大にして最後の戦いが始まる――。